MENU

がん 2026.07.28

肺がんで起こりやすい症状と緩和ケア|息苦しさ・咳・痰・胸水・痛み

このコラムの紹介

「息が苦しくなるのが一番怖い」。肺がんの患者さんからよく聞く不安です。息苦しさは酸素の数字だけでは決まらず、胸水、気道の狭窄、肺炎、治療による肺障害など、原因によって対応が異なります。第2部では、酸素療法や医療用麻薬、送風、姿勢、呼吸リハビリに加え、咳・痰、血痰などの症状や、胸水、骨・脳転移の治療についてお伝えします。

症状は「がんがある場所」によって変わります

太い気管支に近い場所に肺がんがあると、咳や痰、血痰が出やすく、がんが空気の通り道を狭くすると息苦しさが生じることがあります。一方、肺の外側にある病変では、ある程度大きくなるまで症状が出にくいこともあります。また、がんが肺を包む胸膜に及ぶと、胸の痛みや深呼吸に伴う痛み、乾いた咳が出ることがあります。

病気が進むと、倦怠感、食欲低下、体重減少、発熱、腕や顔のむくみなどがみられることがあります。そのほか、転移した場所によって痛み、麻痺、頭痛、吐き気、ふらつきが生じたり、胸水が増え、息苦しくなったりする場合もあります。
これらがすべて起こるわけではありません。また、症状がないから病気が進んでいないとも限りません。小さな変化も、原因や次の治療を考える手がかりになります。

「息苦しい=酸素が足りない」とは限りません

息苦しさは、患者さん本人が感じる主観的な「呼吸のつらさ」です。酸素飽和度が比較的保たれていても強く苦しいことがあり、反対に、数値が低くても自覚症状が強くない方もいます。
原因には、がんや痰による気道の狭窄、胸水、肺炎、治療による肺障害、間質性肺炎、貧血、心不全などがあり、複数が重なることもあります。不安によって呼吸が速くなり、つらさが増す場合もあります。
息苦しさは、病気だから仕方がないと我慢する症状ではありません。酸素の数値だけで判断せず、原因を確認し、できる対策を組み合わせます。

息苦しさを和らげる方法は一つではありません

低酸素には酸素療法、胸水には排液、細菌性肺炎には抗菌薬など、原因に応じた治療を行います。COPD・喘息・間質性肺炎・心不全などの合併症にもそれぞれ対応し、気道が狭い場合には、病院で気管支鏡による処置や放射線治療を検討することがあります。
原因を治療しても息苦しさが残る時は、モルヒネなどの医療用麻薬を使うことがあります。肺を広げたり酸素を増やす薬ではありませんが、息苦しさや呼吸に伴うつらさを和らげます。少量から始め、効果と眠気、吐き気、便秘などを確認しながら調整します。
上半身を起こす、腕をクッションやテーブルで支える、衣服・室温を整える、顔に風を当てるなども役立つことがあります。本人が最も呼吸しやすい姿勢を一緒に探します。

呼吸リハビリテーションとは

呼吸リハビリテーションは、苦しい運動を無理に続けたり、肺を鍛えてがんを小さくしたりするものではありません。肺や心臓の状態、筋力、息切れへの不安をみながら、今ある力を生活に活かす方法を考えます。
楽な姿勢や呼吸法、歩く速度、休むタイミング、着替え・入浴、痰を出しやすくする方法などを学びます。数値が改善しなくても、対処法を知ることで動作時のつらさや不安が和らぐことがあります。病状が不安定な時は無理をせず相談してください。

血痰・喀血や胸水がある時

肺がんが気管支に及ぶと、腫瘍や気道から出血し、血痰がみられることがあります。ただし、血痰は結核、非結核性抗酸菌症、気管支拡張症など、肺がん以外の病気でも起こります。
血痰が出ても、必ず大量出血につながるわけではありません。日時、回数、色、量を記録し、可能であれば写真を残すと診療の参考になります。吐き出したものの大部分が血液である、量が増えている、息苦しさを伴う場合は早めに連絡してください。病院では、状態に応じてカテーテル治療、気管支鏡による処置、放射線治療などを検討します。

がんが胸膜に広がると胸水が増え、肺が圧迫されて息苦しくなることがあります。症状が強い時には、胸腔穿刺・ドレナージ(針や管で胸水を抜く処置)や胸膜癒着術(胸水がたまる空間を減らす処置)を検討します。医療機関や地域の体制によっては自宅で胸水を抜ける場合もありますが、移動や処置の負担と、どの程度生活が楽になりそうかを考えて治療場所と方法を選びます。

骨や脳への転移で起こる症状

骨転移では、痛みや病的骨折が起こることがあります。背骨の病変が脊髄を圧迫すると、手足の動かしにくさ、しびれ、排尿の変化が生じます。血液中のカルシウムが高くなり、食欲低下や意識の変化につながることもあるため、必要に応じて採血で確認します。鎮痛薬、骨を守る薬、放射線治療などを状態に応じて検討します。

脳転移では、頭痛、吐き気、ふらつき、麻痺、言葉の出にくさ、けいれんなどがみられます。数・大きさ・場所、症状、全身状態に応じて、脳のむくみを和らげる薬、放射線治療、手術、薬物療法を検討します。
転移による症状にも、和らげるためにできる治療があります。

すぐに相談してほしい変化

次のような変化がある時は、早めに主治医や治療中の病院へ相談してください。

  • 急に息苦しくなった、短時間で息苦しさが強くなった、会話を続けることが難しい
  • 血痰が増えた、まとまった量の血を咳とともに吐いた
  • 顔や首、腕のむくみが急に強くなった
  • 治療中に新しい乾いた咳、息苦しさ、発熱が出た
  • 急に足に力が入りにくい、しびれが強い、尿が出にくい
  • けいれん、強い混乱、急に反応が悪くなった

症状をうまく説明できなくても、「いつもと違う」と感じた時は、そのまま医療者へ連絡してください。

執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳

トップ/病気別の在宅ケア/肺がん×緩和ケア/肺がんで起こりやすい症状と緩和ケア|息苦しさ・咳・痰・胸水・痛み