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がん 2026.07.28

進行・再発膵臓がんで起こりやすい症状と緩和ケア

このコラムの紹介

進行・再発膵臓がんでは、腹痛や背中の痛み、黄疸、吐き気、食欲不振、腹水、お腹の張りなど、複数の症状が重なって起こることがあります。この章では、症状ごとの見方と緩和ケアでできる対応をまとめました。「このくらいで相談してよいのか」と迷う時にも読んでいただきたい内容です。痛みや吐き気を我慢しすぎず、早めに助けを求めるきっかけになる章です。

進行・再発膵臓がんで起こりやすい症状

膵臓がんが進行したり、治療後に再発したりすると、がんそのものや転移、周囲の臓器への影響によって、腹痛、背中の痛み、吐き気、食欲不振、体重減少、黄疸、お腹の張り、便秘や下痢、倦怠感、むくみなどが出ることがあります。

膵臓は、みぞおちの奥から背中寄りにある臓器です。周囲には、胃、十二指腸、胆管、肝臓、胆のう、大きな血管、腹膜、神経などがあります。そのため、同じ「痛み」でも、膵臓周囲の炎症、神経への影響、肝臓や骨への転移、胃や十二指腸の通り道が狭くなること、腹膜播種による腸の動きの変化、手術後のひきつれなど、原因は人によって異なります。
不安や緊張、不眠、疲労が痛みを強めることもあります。これは「気のせい」という意味ではありません。体の痛みと心のつらさはつながっており、両方を見ながら整えていく必要があります。また、症状の強さと病気の進み具合は必ずしも一致しません。痛みが強いから必ず病気が急に進んだとは限らず、反対に痛みが少なくても注意が必要な変化が隠れている場合があります。

痛みへの緩和ケア

膵臓がんでは、みぞおちから背中にかけて強い痛みが出ることがあります。痛みに対しては、アセトアミノフェン、NSAIDs、医療用麻薬、貼り薬、注射薬などを、痛みの種類や副作用を見ながら調整します。医療用麻薬という言葉に不安を感じる方もいますが、がんの痛みに対して医師の管理のもとで使う薬です。痛みを和らげることで、眠れる、食べられる、動ける時間を取り戻せることがあります。
薬だけで十分に和らがない場合には、痛みの原因に応じて神経ブロックや放射線治療が選択肢になることもあります。これらはすべての方に必要な治療ではありませんが、痛みの原因によっては検討できる場合があります。薬だけで我慢するしかないわけではありません。どこが、いつから、どのように、どのくらいつらいのかを伝えることが、原因と対策を考える手がかりになります。

吐き気・食欲不振・お腹の張り

吐き気や食欲不振には、吐き気止め、胃腸の動きを整える薬、胃酸を抑える薬、状態によってはステロイドなどを組み合わせることがあります。食事は、少量を何回かに分ける、匂いの少ないものを選ぶ、食べられる時間帯に合わせるなど、食べ方の工夫で楽になることもあります。
膵臓がんでは、胃や十二指腸の通り道が狭くなることで、食べるとすぐに気持ち悪くなる、吐いてしまう、お腹が張るという症状が出ることがあります。便秘や腹膜播種によって腸の動きが悪くなることもあります。食べられない理由は一つではないため、食事量だけを見るのではなく、吐き気、便通、腹水、眠気、痛み、薬の副作用を含めて確認します。
食べられないことが続く時は、点滴や栄養について相談する場面もあります。ただし、点滴を増やすことが必ずしも楽につながるわけではありません。病気が進んだ時期には、むくみや腹水、痰が増えて、かえってつらくなることもあります。何を足すかだけでなく、何を減らすかも、ご本人が楽に過ごすための選択です。

腸閉塞・腹膜播種による症状

膵臓がんでは、胃や十二指腸の通り道が狭くなったり、腹膜播種によって腸の動きが悪くなったりすることがあります。便やガスが出ない、お腹が強く張る、吐き気や嘔吐が続く、食べるとすぐ苦しくなるといった変化がある時は注意が必要です。
このような症状では、薬で腸の動きを整える、吐き気を抑える、食事の内容を調整する、点滴を検討する、病院で画像検査や処置を受けるなど、状態に応じた対応を考えます。無理に食べることがかえってつらさにつながることもあるため、「食べられない」だけで判断せず、お腹の張りや便通、吐き気の様子を一緒に見ていきます。

黄疸が出た時に考えること

膵臓がんでは、胆汁の通り道である胆管が狭くなり、黄疸が出ることがあります。皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる、便が白っぽくなる、かゆみが強い、発熱や寒気を伴うといった時は、早めに主治医へ相談してください。
胆管ステントやドレナージなど、病院での処置が必要になることがあります。すべての黄疸がすぐに処置を必要とするわけではありませんが、発熱や寒気を伴う場合は胆管炎などの可能性もあり、早めの判断が必要です。黄疸はご本人が気づきにくいこともあります。ご家族が「目が黄色い」「尿の色が濃い」と感じた時も、相談のきっかけになります。

腹水やむくみが強くなった時

腹水やむくみが強い時は、利尿薬、腹水を抜く処置、塩分や水分の調整、体位の工夫、皮膚トラブルの予防などを考えます。足のむくみが強いと、皮膚が傷つきやすくなったり、歩きにくさにつながったりします。腹水が多い時は、お腹の張り、食欲低下、息苦しさの原因になることがあります。
水分を入れれば元気になるように感じるかもしれませんが、病気が進んだ時期には、体が水分を受け止めにくくなっています。むくみや腹水がある時は、点滴の量を増やすより、体の向きを工夫したり、皮膚を守ったり、苦しさを減らす薬を使ったりする方が楽につながる場合もあります。

だるさ・食欲低下と悪液質

進行した膵臓がんでは、強いだるさ、体重減少、食欲低下が目立つことがあります。治療の副作用だけでなく、がんそのものによる炎症や代謝の変化が関係していることもあります。食べたい気持ちはあっても、体が食べ物を受け止めにくくなっている場合があります。
この時期に「食べないから弱る」と考えすぎると、ご本人もご家族も苦しくなります。食べる量を増やすことだけを目標にするのではなく、口にしやすいものを少量にする、食事の時間を短くする、無理にすすめすぎないなど、食べることが嫌な時間にならない工夫も必要です。食事は栄養だけではなく、家族との時間や楽しみでもあります。少しでもその方に合った形を探していきます。
食べることは、生きることです。けれど、人は生きるためだけに食べているわけではありません。食卓を囲む時間、好きな味を一口だけ楽しむこと、誰かが作ってくれたものを眺めることも、その人の生活や思い出につながっています。食べられる量が少なくなっても、食事の意味まで失われるわけではありません。

早めに相談してほしい症状

次のような症状がある時には、患者さんやご家族だけで判断せず、早めに主治医や訪問診療医へ相談してください。

  • 急に強い腹痛や背中の痛みが出た
  • 吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
  • 便やガスが出ず、お腹が強く張っている
  • 吐血、黒い便、血便がある
  • 皮膚や白目が黄色くなり、発熱や寒気を伴う
  • 急に足に力が入りにくい、しびれが強い、尿が出にくい
  • けいれんや強い混乱がある、呼びかけへの反応が悪い
  • 息苦しさが強い、眠気が強くいつもの薬が飲めない

病院で処置を受ける方がよい場合もあれば、在宅で苦痛を和らげることを優先する場合もあります。迷った時に連絡できる窓口を、あらかじめ確認しておくと安心です。

症状を一つずつ整理する

がんの苦痛は、身体の痛みだけではありません。痛みや吐き気などの身体的苦痛。不安、恐怖、怒り、孤独感などの精神的苦痛。仕事、お金、家庭内の役割、介護などの社会的苦痛。「これからどうなるのか」という深い問い。これらは互いに影響し合います。
緩和ケアは、こうした苦痛を一つずつ見つけ、整理していく医療です。病気を完全に消すことが難しい時でも、苦しみを減らす方法はあります。痛みや吐き気、だるさは、我慢しても良くなるとは限りません。「このくらいで相談してよいのかな」と思う時ほど、早めに伝えてください。

執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳

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