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院長対談 2023.03.15

自費リハビリ施設 STROKE LAB
代表取締役 金子唯史

対談記事 STROKE LAB ニューロリハビリ研究所

むすび在宅クリニック 院長:香西友佳(こうざいゆか)
STROKE LAB ニューロリハビリ研究所 代表取締役:金子唯史(かねこただふみ)

株式会社STROKE LABは2015年に都内・御茶ノ水に自費リハビリ・療法士教育施設として開設。脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患の患者さんを主な対象に、「慢性期は良くならない」といった世間の一般イメージを払拭すべく取り組んでいます。リハビリの成果、自主トレなどに関する動画をYouTubeで公開しています。
→公式サイトリンクhttps://www.stroke-lab.com

二人の出会いについて

院長:香西友佳

金子:
僕が代表を務めるSTROKE LAB主催の半年間にわたるリハビリ塾に、香西先生が参加されたことがきっかけです。理学療法士(PT)、作業療法士(OT)を対象に行っており、医師の参加は初でした。

香西:
リハビリ科医として回復期病棟で勤務し、2年半が経過した頃でした。リハビリ科医の仕事は、患者さんを診察して回復見込みを予測し、負荷量を決めて、患者さんやご家族、医療チームと共有して方針を決定し、随時調整していくことです。しかし、実際に日々のリハビリを行うのはPT、OT、あるいは言語聴覚士(ST)で、医師よりも担当の療法士の方が患者さんと接する時間が長く、リアルタイムで状況を把握しています。さらに、リハビリ科医で療法士のようにリハビリを施す技術がある人は非常に少ないです。とても恥ずかしいことだと感じました。

金子:
そういう考え方をする医師は非常に珍しいですね。

香西:
まぁ嫉妬ですよ(笑)。悔しいですもん、自分ができないのって。いくら理論がわかっていても、実際に触れて良くしていくことができないなら、患者さんにとってリハビリ科医の存在意義って何なのだろうと思いました。それで、金子先生の塾に通って、リハビリの技術を学ぼうとしました。

金子:
実際やってみてどうでしたか?

香西:
患者さんの筋肉や組織の動きを手で感じ取り、適切な圧を加えながら筋肉を弛緩させたり、効率の良い運動ができるように誘導したりする手技を教わりましたが、そもそも自分の手に伝わる微弱な刺激をとらえられず、半年やそこらで身につくものではないと身に染みてわかりました。療法士の専門学校に通って一から勉強したいほどです。

金子:
先生欲張りすぎですって。PTとOTですら役割分担しているのですから。

香西:
よく言われます(笑)。最終的に、私にとってリハビリは「歳を重ねてからも大切な人たちと楽しく過ごせるコミュニティを作る」という夢の一部なので、自分にできないことは信頼できる療法士に任せようと思いました。

金子:
先生にしかできないこと、僕にしかできないことがありますから。一緒にやっていきましょう。

対談記事 STROKE LAB ニューロリハビリ研究所

終末期医療におけるリハビリについて

香西:
終末期医療においてもリハビリはとても重要です。加齢、病気、怪我などによって何らかの心身の問題を抱えている方で、その問題が中長期に渡ることが予想される状況であれば、リハビリの適応がないということはほとんどありません。リハビリによる機能回復の見込みがない場合でも、廃用によるさらなる機能低下を防いだり、心身の調和を促したりするためにリハビリを行います。ただし例外は、患者さん自身が拒否している場合や、生命の維持のための治療が優先される場合、リハビリが苦痛になってしまう場合などです。

金子:
終末期のリハビリは、脳卒中や骨折などの急性期、回復期、生活期のリハビリと大きく異なると感じます。変化していく身体や精神の機能に合わせて最適なリハビリ目標を設定するには、病状の理解、医師や看護師との連携が欠かせず、臨機応変さも求められます。患者さんだけでなく、ご家族や地域社会などにも目を向ける必要があります。

香西:
終末期には、リハビリを行なっていても昨日できていたことが今日はできないという状況も起こり得ます。一番つらいのは患者さんです。自分が変わっていくのを真っ先に自覚するのは患者さん本人なので、気休めや慰めの言葉は意味がないし、そばにいる医療者の言葉や表情がさらに患者さんを傷つけてしまうこともあります。

金子:
状態が変わったからと言って、ただ目標を下げればいいというものではないですね。療法士として非常に難しい判断です。

香西:
一番大事なことは、終末期だけでなくどの患者さんと接する時にも言えることですが、患者さんを知ろうとすることだと思います。変わっていく自分に患者さんがどう対処するかは、これまでその方がどうやって苦難を乗り越えてきたかによります。障害受容という言葉がありますが、無理に状態を受け入れさせることが正解ではありません。今までの人生について患者さんご自身やご家族に聞くことで、また、患者さんは私たちに話すことで、人それぞれに違う対処の仕方が見えてくる場合があります。人生は結果ではなく過程であり、その方のこれまでの人生の全てに意味があり、問題解決の糸口があります。

金子:
終末期のリハビリにおいては、ただ認知・身体機能を評価して目標を設定するのではなく、対話によりその患者さんを知り、その方の人生を振り返ることで、その時々に適切なリハビリを選択していかないといけないですね。リハビリは回復ではなく人間の復権だと感じます。

香西:
この点において療法士にしかできないことと言えば、患者さんに触れながら対話することです。美容院やマッサージに行くと饒舌になる方っていますよね。ひとは触れられていると、相手に受け入れられているように感じ、素直になる傾向があります。だから、患者さんが療法士にしか話していないこともたくさんあるのでしょうね。これは療法士にしかできないことだと思うので、たくさん触れて、対話して、患者さんを知って、癒してください。医者が触れると、注射とか採血などの痛いことをされるのではないか、なにかその部位に異常があって触診されているのではないかと思われて、かえって緊張させちゃいますから。

代表取締役 金子唯史

今後やりたいこと

香西:
私のやりたいことの1つに脳卒中後の患者さんの復職支援があります。回復期病棟で勤務していたときに、高次脳機能障害(脳卒中などの後遺症で、思考力や理解力、集中力などが低下すること)の患者さんが元の職場に戻れるよう、元の仕事内容を教えてもらい、その中からできそうな仕事を切り出し、ひたすらそれを入院中に訓練するということをやっていました。まだまだ、脳卒中後の復職はハードルが高く、その理由は医療と福祉の連携が取れていないこと、職場の理解不足などによるものです。うつや適応障害の方の復職は以前よりも支援団体が増え、少しずつ道がひらけてきています。同じように脳卒中後の患者さんにおいても、復職の可能性をもっと上げられるようにしたいです。いずれ、患者さんのお試し出社に療法士が同行するなどの医療と福祉をつなぐ支援をしたいです。

金子:
僕の施設にやってくる患者さんが目指す機能回復の先には、できるだけ元の生活に戻りたいという思いがあります。患者さんの希望を叶えるために是非一緒にやっていきましょう。

香西:
ありがとうございます!心強いです。先生のやりたいことはなんですか?

金子:
僕は日本一信頼される神経系に特化した自費リハビリ施設を作りたいです。そしてモチベーションのある仲間と本当に役立つ情報や技術を発信して、リハビリ業界の発展や当事者への社会貢献も実施していきたいです。

香西:
金子先生を見習って私も情報発信には力を入れていきたいと思います。人に教えることは自分の一番の勉強にもなりますし、正しい情報が伝わることで日本全体の医療水準が上がればいいことしかないです。ひとは怪我をするし、病気になります。それを回避することはもちろんですが、そういった不運に見舞われた後も、ご自身の力、ご家族の力、そして適切な医療の力でいい人生を送っていける、そういった社会を一緒に作っていきましょう。

対談記事 STROKE LAB ニューロリハビリ研究所

ファシリテーター・編集:児玉紘一
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳
対談日:2023年1月14日

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