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院長対談 2023.03.17

居宅介護支援事業所 ジョイ・サプライ管理者 / ケアマネジャー丹羽利彰

対談記事 ジョイ・サプライ 丹羽さん

むすび在宅クリニック 院長:香西友佳(こうざいゆか)
居宅介護支援事業所ジョイ・サプライ 管理者/ケアマネジャー:丹羽利彰(にわとしてる)

ジョイ・サプライの紹介:弊社は2011年2月に居宅介護支援事業所と訪問介護事業所の併設で始めました。ちょうど東日本大震災があった年からスタートして約12年、「思いやりと真心を持って、ご利用者に寄り添う介護を目指す」を理念に掲げ事業所運営をして参りました。これからも初心を忘れず皆様から信頼して頂ける事業所運営に努めて参ります。
→公式ホームページhttps://www3.hp-ez.com/hp/lifeservice/

二人の出会いについて

香西:
丹羽さんとは古い付き合いですね。私がリハビリ科医として回復期病棟で勤務していた時に、何人か同じ患者さんを担当しました。私が主治医だった患者さんのケアマネジャー(以下、ケアマネ)を丹羽さんがされていて、患者さんのご自宅の状況確認に行った時や、退院後の生活に関する担当者会議の際に顔を合わせましたね。

丹羽:
2016年ごろですかね。懐かしいです。

香西:
丹羽さんが患者さんにとても親身に接していたり、難しい症例の時にもうまく対処されていたりしたのを見て、人としてもケアマネとしても信頼できる方だなと思いました。だから、また一緒にお仕事ができることがとても嬉しいです。

丹羽:
ありがとうございます。私も同じ気持ちです。一緒にいろんな方を担当しましたね。あの頃の患者さん(介護業界では患者さんではなく「利用者様」と呼ぶことが多い。以下は患者さんで統一)で今も私が担当している方もいますよ!

香西:
当時の患者さんのことはとても気になります。元気でいてくださるといいな。医師は勤務場所が変わると患者さんとの関係が途絶えてしまうことが多く、なかなかその後のご様子を知る機会がないのがつらかったです。今後はそうならないはずなので、担当する患者さんとは一生のお付き合いができたら嬉しいです。ところで、リハビリ科にいた頃の私の印象ってどんな感じでした?

丹羽:
正直、今話している感じと全然違います(笑)。あの時はピシッとしていてすごく医者らしい感じで、談笑している時でも先生はその姿勢を崩さない感じでした。だから、今日お話ししていて、ちょっと雰囲気の違いに戸惑っています。

香西:
ほんとですか?全然普段と変えているつもりはないのですが。私も大勢が集まる会議などで緊張していたのかもしれないです。医者という立場でありながら、大体の場面で一番年下でしたし、リハビリ科医としての経験も浅かったので、余裕がなかったのだと思います。

丹羽:
絶対今の方がいいですよ。素で行ってください。患者さんも今の先生の雰囲気でしたら、初対面でも緊張せずに心を開いてくれると思います。

香西:
ありがとうございます。素の方がいいと言ってもらえて嬉しいです。初対面の方と会う時はあがり症が出てしまうことが多いですが、あまり医者っぽさが出て相手を緊張させてしまわないよう気をつけます。

丹羽:
あまり深く考えず良い意味で気軽にお伺いすれば、香西先生の良いところが伝わると思いますよ。

対談記事 ジョイ・サプライ 丹羽さん

在宅療養におけるケアマネの役割

香西:
丹羽さんはどうしてケアマネになろうと思ったのですか?

丹羽:
もともと介護福祉に関わる仕事がしたいと思っていて、30代まで介護施設で介護職員をやっていました。働いている中でケアマネと関わる機会も多く、自分もケアマネとして患者さんの支えになりたいと思い、転職しました。

香西:
とても大変なお仕事だと思いますが、実際にケアマネとして働いてみてどうですか?

丹羽:
うーん、大変だとは思いますが、非常にやりがいを感じます。

香西:
ケアマネの仕事のどんなところにやりがいを感じますか?

丹羽:
ありきたりな答えかもしれませんが、患者さんからありがとうと言ってもらえる瞬間ですね。私がいなくても自分のことは自分でできる患者さんもいて、そのような方にお礼を言っていただくとむしろ本当にお役に立てたのかなと申し訳ない気持ちになってしまうくらいですが。患者さんからのお言葉が、明日も頑張ろうという糧になります。

香西:
患者さんに尽くしている丹羽さんらしいなと思います。ケアマネは在宅療養に欠かせない存在ですが、実は私もケアマネがどんなことをしているのか、全体像を知りません。1か月の流れや業務内容を教えていただけますか?

丹羽:
月の上旬は前月の実績入力、中旬に翌月の計画書作成等のデスクワークを行い、下旬は患者さんのお宅を訪問します。最低月1回は患者さんと顔を合わせるようにしています。

香西:
半月くらいはデスクワークがメインということになるのですか?

丹羽:
実際には患者さんのご自宅等に伺っていることの方が多いです。書類作成等のデスクワークは18時以降にすることがほとんどです。患者さんのためになる書類はいくらでも作成しますが、書類よりも患者さんと会うことに時間をかけたいです。特に、患者さんからお困りのことがあって呼ばれた場合は、できるだけ早く駆けつけるようにしています。

香西:
仕事量が多い中そういったことを大事にされていて尊敬します。在宅では、病院のように医師主導で方針を決めていくというケースは稀です。常に患者さんやご家族のご意向をお聞きしながら、できるだけそれに沿った形でいろんなことを調整していきます。医療に関する調整は医師が担いますが、それ以外の全体の調整はケアマネが役割を担います。看護師やヘルパーの訪問日程の決定、ベッドや手すりなどの介護用品の手配、デイサービスやショートステイなどの通所型サービスの職員とのやりとりなど、やることは多岐に渡っていて、それも介護保険の限られた単位の中でうまくやりくりしなければいけません。患者さんの状態は常に変わりますから、その時々の患者さんの状態を把握していることが前提になります。全体が見えていて、気配りができる人でないとできない仕事だと思います。しかも、介護保険の診療報酬改定が3年ごとにあり、知識のアップデートも欠かせません。

丹羽:
患者さんの大事なことを任されているので、頑張らないといけないなと思います。私にしかできないこと、先生にしかできないことがありますから。これからも一緒にやっていきましょう。

ケアマネと医師のあるべき関係性とは

丹羽:
患者さんの状態をお互いの立場から理解して、迅速かつ密に情報共有し、本音で相談が出来る関係であるべきだと思います。

香西:
その通りですね。在宅医療に関わる事業所がみんな歩みを揃えて、同じ目的を共有して、在宅介護・医療にあたることが重要です。立場も違うし、バラバラのタイミングで患者さんに接することになるので、患者さん、ご家族、医師、ケアマネ、看護師、薬剤師、介護職員、それぞれで見えている世界が違うということが起こります。

丹羽:
でも、どの人が見ている世界も正解ですよね。

香西:相手の見解を受け入れて、その上で方針を決めていかないといけません。みんなが自分の意見をそのまま患者さんに伝えてしまうと、ちょっとしたニュアンスの差で患者さんを混乱させてしまうこともあります。だからこそ随時情報を共有し、意見の違いがあっても相手の立場を尊重できる関係性・共通認識で患者さんに接していくことが大事です。

丹羽:
香西先生にそう言ってもらえてとても良かったです。正直に言いますと、ケアマネは医師に対して少し距離を感じてしまうことも時折あります。でも、今日先生とお話しして、距離が縮まったように感じます。

香西:
医療介護チームのそれぞれが代わりのいない重要な役割を担っていて対等な立場なので、言うべきことが言えないなんてことはあってはならないと思っています。そんな思いが丹羽さんに伝わっていてなによりです。これからかかわる様々な職種の方にもそう思ってもらえるよう努めます。

対談記事 ジョイ・サプライ 丹羽さん

在宅医療の問題と課題

香西:
ケアマネが医師に対して遠慮してしまい、意見しにくいというのも1つの問題だと思います。ケアマネや他の医療・介護チームのメンバーでさえそう思っていたら、患者さんは医師に対して壁を感じてしまっていますよね。そう思われないような立ち振る舞いをすることが、在宅医療の課題であり、私の大きな課題だなと思いました。

丹羽:
やはり医療・介護チームの内部でうまくコミュニケーションが取れるということは大事ですね。さらに、事業所間の連携においては、物理的な面での課題もあるなと感じます。クリニックごとに連絡を取る時のルールが違ったり、すぐに医師に連絡がつかなかったりして困ることがあります。

香西:
コミュニケーションがきちんと取れることは本当に大事だと思います。私も同じように連絡の取りにくさに悩まされることがあり、密な連携かつ迅速な情報共有が必要だと常日頃から感じています。さらに、患者さんごとにチームのメンバーは変わるので、コミュニケーションにはより慎重になります。それを潤滑にするためにも、情報連携ツールの導入を考えています。

丹羽:
お互いに信頼できる関係であることが大前提で、情報連携ツールがあればさらに心強いですね。そしてもう一点、在宅医療の問題点をあげるとすれば、在宅医療にかかわる人材が不足していることでしょうか。

香西:
本当にそのとおりだと思います。在宅は大変だと嫌厭されることもありますが、とてもやりがいがあり、ひとりひとりの能力が最大限に活かせる、楽しい現場だと思います。患者さんとの距離が近く、“ひと”と“ひと”として向き合えることも魅力です。すでに医療介護の現場で働かれている方も、これから医療介護のお仕事を目指す方も、ぜひ在宅医療の分野も知っていただいて、ゆくゆくは一緒にお仕事ができると嬉しいです。そのためにも、今、私たちが良い関係、良い環境を作り、一緒に働きたいと思ってもらえるようにしたいですね。

丹羽:
そうですね。後任育成なども含めて環境を整えていきたいです。この時間を通じて深まった関係性を大切にして、これからは今まで以上に細かなことでも気になることがあれば連絡します。本日はありがとうございました。

香西:
こちらこそありがとうございます。向き合って話すことの大切さを改めて痛感しました。今後ともよろしくお願いいたします。

管理者 / ケアマネジャー:丹羽利彰

ファシリテーター・編集:児玉紘一
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳
対談日:2023年1月30日

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