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コラム 2026.08.07

訪問診療の費用はいくら?<4章>

障害者手帳

このコラムの紹介

医療費の負担を軽くする制度と、療養中の生活費を支える制度は別々にあります。所得、年齢、障害の状態、加入する保険、住んでいる自治体によって対象や申請先も変わります。第4章では、東京都の心身障害者医療費助成制度(マル障)、特別障害者手当、指定難病、人工透析・血友病などの特定疾病療養受療証、自立支援医療、障害年金などの違いを整理します。相談前の確認書類と、よくある質問もまとめています。

医療費や暮らしを支える制度

制度には、医療費そのものを軽くするものと、療養中の生活費を支える手当や年金があります。名前が似ていても、目的と申請先は別です。手帳を取得すればすべてが自動的に適用されるわけではなく、一つずつ申請が必要です。

身体障害者手帳などと、東京都の心身障害者医療費助成制度(マル障)

身体障害者手帳は、病名だけでなく、視覚、聴覚、肢体、心臓、呼吸器、腎臓、肝臓、ぼうこう・直腸などの機能障害が、定められた基準に該当する場合に交付されます。
がんの患者さんの場合だと、例えば人工肛門や腎瘻を造設したり、治療できない脳腫瘍で麻痺などを生じたり、肺腫瘍・肺転移で日常生活に影響が出るような呼吸困難を生じていたりする際に身体障害者手帳の取得が可能になる場合があります。こちらは、自動的に対象になることはなく、身体障害者手帳の指定医が診断書を作成し、患者さんまたはご家族が区市町村へ申請します。

手帳を取得しただけでは、医療費助成は自動的に始まりません。東京都では、別途、心身障害者医療費助成制度(通称:マル障)を申請し、受給者証の交付を受ける必要があります。東京都のマル障は、2026年8月時点で、主に身体障害者手帳1・2級の方、一定の内部障害では3級の方、愛の手帳1・2度の方、精神障害者保健福祉手帳1級の方が対象です。ただし、所得制限、65歳以降に初めて対象となった場合の制限、後期高齢者医療と住民税課税の組み合わせなど、対象外となる条件があります。64歳以下でがんなどの重篤な疾患にかかり、後遺症が残っている方は、ご自身が対象でないか確認しましょう。

マル障の住民税課税者は原則1割負担で、板橋区の案内では、外来は月18,000円・年144,000円、入院を含む月は57,600円(多数回該当44,400円)が上限です。住民税非課税者は、外来・入院ともに一部負担はありません。いずれも入院時の食事代、介護保険の自己負担、自費診療などは対象外です。国の高額療養費制度とは別に確認する必要があるため、マイナ保険証等とマル障受給者証を医療機関へ提示し、受給者証を発行した区市町村の案内をご確認ください。もう一度お伝えしますが、障害者手帳を持っていても、自動的にマル障の受給資格があるわけではありません。手帳の等級、所得、年齢、加入している保険などを、住民票のある区市町村で確認してください。

特別障害者手当|障害者手帳がなくても対象になることがあります

特別障害者手当は、医療費を直接免除する制度ではなく、日常生活で常時特別の介護を必要とする、在宅の20歳以上の方へ支給される国の手当です。年齢の上限はありません。2026年8月時点の月額は30,450円です。
障害者手帳がなくても、所定の診断書で重い障害状態にあると認められれば対象になる可能性があります。板橋区は、主に要介護4・5の方についても、介護の状態により受給できる可能性があると案内しています。
一方、施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者支援施設など)へ入所している方、病院等に3か月を超えて入院している方、本人や扶養義務者の所得が一定以上の方は対象になりません。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどは支給対象になり得ます。申請した翌月分からの支給となるため、いわゆる「寝たきり」に近い状態や重い障害がある状態の時には、早めに区市町村へ相談してください。

指定難病の医療費助成

パーキンソン病やALSなど特定の疾患で、指定難病の認定を受けている方は、認定された病気とそれに付随する傷病について、指定医療機関等で受けた医療と、一部の介護保険サービスの助成を受けられます。交付される書類の名称は「特定医療費(指定難病)受給者証」です。
国の指定難病は、全国共通の対象疾病と認定基準に基づき、都道府県または指定都市へ申請します。自治体独自の対象疾病や助成が別に設けられている場合もあるため、お住まいの区市町村の窓口で確認してください。
対象となる医療と介護保険サービスの自己負担は、もともと3割負担の方は2割になり、さらに所得に応じた月額上限が設けられます。国制度では、一般の月額上限は0~30,000円、高額かつ長期の方は0~20,000円、人工呼吸器等装着者は1,000円です。この上限は、対象となる医療と介護の自己負担を合算した金額に適用されます。
対象となる介護保険サービスは、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護医療院サービスです。複数の指定医療機関、薬局、対象事業所で支払った自己負担を、自己負担上限額管理票で合算します。したがって、指定難病に関する医療費と、対象となる居宅療養管理指導費を別々の上限として足すのではありません。

ただし、受給者証に記載された疾病との関係と、提供機関が指定医療機関等であることを確認する必要があります。訪問介護、交通費、認定疾病に関係しない医療・介護などは助成対象外です。

人工透析・血友病などの特定疾病療養受療証

人工透析を行う慢性腎不全、血友病、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群などでは、「特定疾病療養受療証」の対象になることがあります。協会けんぽでは「健康保険特定疾病療養受療証」という名称で、申請先は区市町村ではなく、加入している医療保険の保険者です。
交付を受けて医療機関へ提示すると、対象治療の自己負担は原則として1医療機関・入院外来ごとに月10,000円です。ただし、70歳未満で標準報酬月額53万円以上の方が人工透析を受ける場合は月20,000円です。対象疾病に関係しない訪問診療や介護保険の費用まで、この上限になるわけではありません。
「特定疾病療養受療証」と「特定医療費(指定難病)受給者証」は、名称が似ていますが別制度です。前者は医療保険の特例で保険者へ、後者は難病法に基づく助成で都道府県・指定都市へ申請します。詳しい上限と支払い方法は第3章で説明しています。

自立支援医療、子ども・ひとり親医療、生活保護など

精神科の通院医療、身体障害の軽減を目的とする特定の治療などには、自立支援医療が使える場合があります。子ども、ひとり親家庭などには自治体の医療費助成があります。生活保護を利用している方は、指定医療機関で医療扶助、指定介護機関で介護扶助の対象となる場合があります。制度ごとに対象となる診療や優先順位があるため、受給者証や医療券を医療機関へ提示してください。

障害年金、傷病手当金、自治体独自の手当、医療費控除

障害年金、会社員等の傷病手当金、自治体独自の障害者手当は、医療費の窓口負担を直接下げる制度ではありませんが、療養中の収入を支える大切な制度です。病名だけでなく、初診日、保険料の納付状況、生活や仕事への支障などで判断されます。医療費控除も、支払った医療費が一定額を超えた年に、所得税・住民税の負担を軽くする可能性があります。
同じ病状でも、年齢、働き方、加入している保険、世帯の所得、住んでいる自治体によって使える制度が変わります。医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、区市町村の障害福祉・介護保険・国保年金の窓口などにつないでもらいましょう。

訪問診療を始める前の確認と、よくあるご質問

相談の時に、次のものが分かると、費用の見通しを立てやすくなります。
・マイナ保険証の資格情報、または資格確認書
・医療費の自己負担割合と、高額療養費の限度額区分
・介護保険被保険者証、負担割合証、要介護・要支援の区分
・指定難病、マル障、自立支援医療などの受給者証
・身体障害者手帳、愛の手帳、精神障害者保健福祉手帳
・人工透析・血友病などの特定疾病療養受療証
・同じ月にかかる病院、薬局、訪問看護などのおおよその自己負担額

医療機関には、通常月の目安だけでなく、臨時往診、夜間・休日、交通費、検査や処置、看取りの月に増える可能性がある費用も確認しておきましょう。

Q1.介護保険の認定がなくても、訪問診療は受けられますか?

受けられます。訪問診療そのものは医療保険です。介護保険の認定がなくても、通院が困難で、医師が訪問診療の必要性を認めた方は対象になり得ます。なお、介護保険の認定有無により、居宅療養管理指導費の扱いや、介護保険で利用できるサービスが変わります。
65歳以上の方は、介護が必要となった原因を問わず、要介護・要支援認定を申請できます。40~64歳の医療保険加入者は、がん(回復の見込みがない状態)、ALS、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患など、16の特定疾病が原因で介護が必要になった場合に申請できます。
また、医師の居宅療養管理指導費は、ホームヘルプやデイサービスなどに使う介護保険の区分支給限度基準額には含まれないため、ほかの居宅サービスの利用枠を減らしません。

Q2.訪問診療・訪問看護・薬を全部まとめて請求してもらえますか?

診療所、訪問看護ステーション、薬局はそれぞれ別の事業所で、請求書も別々に届きます。マイナ保険証で限度額情報を利用しても、複数の医療機関等の支払いがその場ですべて一つにまとまるわけではありません。医療機関ごと、入院・外来ごとに上限まで支払う場合があり、同じ月の合計が世帯の上限を超えた時は、後日、加入する保険者から超過分が支給されます。自動支給か申請が必要かは保険者によって異なります。処方せんを発行した医療機関と、その処方せんを受け付けた薬局の自己負担は合算して計算します。

Q3.高額療養費の払い戻しは、どのように申請しますか?

加入している医療保険によって異なります。協会けんぽでは高額療養費支給申請書の提出が必要です。東京都の後期高齢者医療では、初回は約4か月後に届く申請書を返送し、一度振込みを受けた後は、次回以降は原則として同じ口座へ自動的に振り込まれます。健康保険組合や共済組合には、レセプトをもとに申請なしで自動支給するところもあります。案内が届いただけでは申請完了にならない場合があるため、届いた書類を確認してください。請求期限は原則として診療月の翌月1日から2年です。限度額適用認定証等の取得方法は第3章で説明しています。

Q4.高額療養費の世帯合算について教えてください。

制度上の条件を満たす自己負担額は、世帯で合算できます。ただし、ここでいう「世帯」は住民票上の家族全員ではなく、原則として同じ医療保険に加入する被保険者・被扶養者などです。家族でも加入する保険者が異なる場合は合算できません。同じ月に家族がそれぞれ受診した場合や、一人が複数の医療機関を受診した場合に、合算額が上限を超えると、超えた分が支給されます。

Q5.どの支払いが合算対象になりますか?

「合算」には、①高額療養費で同じ月の医療費を合算する場合と、②高額医療・高額介護合算療養費制度で8月1日から翌年7月31日までの医療費と介護費を合算する場合があります。ここでは、まず①の計算対象を説明します。自己負担額は医療機関ごとに計算し、同じ医療機関でも「医科入院」「医科外来」「歯科入院」「歯科外来」は、それぞれ別に計算します。
処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた際の自己負担額は、処方せんを発行した医療機関の自己負担額に合算して計算します。
70歳未満の方は、1つの医療機関(上記の区分ごと)の自己負担額が21,000円以上の場合のみ合算できます。70歳以上の方は自己負担額をすべて合算できます。

介護保険の訪問看護、居宅療養管理指導などは、①の高額療養費の同月合算には含まれません。介護保険分は高額介護サービス費で確認し、医療費と介護費の両方が高い場合は、②の1年分の合算制度を確認します。ただし、特定医療費(指定難病)受給者証を利用する方は、認定疾病に関する訪問看護や居宅療養管理指導など、対象となる介護保険サービスが指定難病の月額上限に合算されます。交通費、自費の物品、訪問介護などは対象外です。詳しい上限と対象外費用は第3章にまとめています。加入する医療保険の窓口と、お住まいの区市町村へご確認ください。

Q6.人工透析を受けている場合、高額療養費の上限まで支払いますか?

特定疾病療養受療証の交付を受け、医療機関へ提示すると、人工透析に関する対象治療は原則月10,000円です。ただし、70歳未満で標準報酬月額53万円以上の方は月20,000円です。医療機関ごと、入院・外来ごとに上限が適用され、対象疾病と関係のない診療や介護保険の費用は別に計算されます。

Q7.訪問診療の開始前に正確な月額を出してもらえますか?

負担割合、所得区分、訪問頻度、居住場所、公費制度、現在の処置が分かれば、基本的な目安はお伝えできます。ただし、急な病状変化、検査、処置、薬、夜間や休日の往診などは事前に確定できません。通常月と、病状が変化した月の両方を想定して説明を受けると、見通しを持ちやすくなります。ご検討されている訪問診療のクリニックまでお問い合わせください。

まとめ|費用の不安も、療養の相談の一部です

訪問診療の費用は、1回いくらという単純な足し算ではありません。まず、診察が月1~2回で足りそうか、頻回に必要そうかを考え、年齢と所得、医療・介護それぞれの負担割合、公費医療の受給者証、必要な医療行為を確認します。
病状が比較的安定している方は、月2回の基本額が目安になります。医療・介護とも1割負担の方で月7,000~8,500円程度です。一方、訪問回数や医療行為が増える方は、細かな点数をすべて予測するより、高額療養費や指定難病などの月額上限を確認する方が、支払いの見通しを持ちやすくなります。指定難病では、対象となる医療と一部の介護保険サービスを合わせて月額上限を管理します。
障害者手帳を取得できる方はマル障の対象になる可能性があり、手帳がなくても特別障害者手当を受けられる場合があります。人工透析や血友病などでは、特定疾病療養受療証も確認します。ただし、制度は知っているだけでは適用されず、それぞれ申請が必要です。

お金の問題は、ご本人とご家族が、無理なく療養を続けるための大切な相談です。「この処置をしたら、いくら増えますか」「使える制度はありますか」「今の支払いを続けるのが苦しいです」。そのようなことも、遠慮なくお聞かせください。
何を大切にして家で過ごしたいかを一緒に考える時、費用や介護する方の生活も、その中に含まれます。必要な医療と暮らしの両方を守れる方法を、一緒に探していきます。

情報の基準日・参考資料

本稿は2026年8月時点の制度・診療報酬に基づいています。高額療養費の自己負担限度額は、2026年8月診療分からの内容を記載しています。今後の制度改正や自治体の取扱いにより変更される可能性があるため、実際の適用区分・申請方法は、加入する医療保険、住民票のある区市町村、各医療機関へご確認ください。
・板橋区「心身障害者医療費助成(マル障)」
板橋区「特別障害者手当(国制度)」
東京都保健医療局「難病医療費助成の助成内容」
厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
日本年金機構「障害年金」
国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
・厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
・全国健康保険協会「高額療養費(特定疾病療養受療証・高額医療費貸付制度)」
・厚生労働省「特定疾病の範囲」
・板橋区「介護サービスの利用者負担と支給限度額

執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳

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