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コラム 2023.03.07

がんと共に歩む旅路2章
−病院での抗がん治療をやめた患者さん、ご家族の方へ−

2章 緩和ケア病棟・ホスピスと在宅療養の違い、メリットとデメリット

緩和ケアとは何ですか?

前提として、緩和ケアは、さまざまな疾患、特に生命を脅かすような病に直面している方々に対して、苦しみを取り除くために行われるケアです。緩和ケア=終末期医療ではなく、早期がんの方や治療中の方であっても、つらい症状や精神的な苦痛、社会的・経済的に困っていることなどがあれば、緩和ケアは必要です。緩和ケアはいつでも、どこでも、誰でも受けられるもので、その本質には提供する場所による違いはありません。

がん患者さんはどこで亡くなるのですか?

2016年のがん患者さんの死亡場所は、緩和ケア病棟以外の病棟・診療所が72.4%、緩和ケア病棟が12.5%、自宅が11.0%でした¹。ただし、ご自身のこれからを決める際にこれを参考にする必要はないと思いますので、実現可能かどうかはひとまずおいておいて、これ以外の場所も含め、どこがいいかなとお考えいただくのがよいと思います。

緩和ケア病棟のメリット、デメリットを教えてください。

緩和ケア病棟には、医師や看護師、心理士、音楽療法士、医療相談員などたくさんの職種が揃っていて、多職種でのケアが充実しています。例えば、医師からの病状説明に看護師や心理士が同席し、悪い知らせを受けた患者さんやご家族の心のケアに当たります。また、音楽療法や園芸療法、アロマセラピーを提供している緩和ケア病棟もあります。
そして、緩和ケア病棟はそれ以外の場所で和らげることが難しい苦痛に対処する、専門的で高度な緩和ケアを提供する場です。具体的には、1日に何度も薬を調整したり、せん妄などで目が離せない方にも対応したりすることができ、お着替えや排泄も複数人での介助ができるので患者さんの身体面の負担は少なくなるかと思います。家族の宿泊ができるところも多いです。

デメリットとしては、個室代がかかる場合があること(1日5000円〜数万円)、入院を希望してもすぐには入院できず待機時間があること(多くは数日〜2週間程度)、飲酒はある程度容認されていますが、喫煙やペットとの交流は難しいことが挙げられます。また、現在の制度ではがん以外の疾患の方の入院は難しいです。

在宅医療(訪問診療)のメリット、デメリットを教えてください。

在宅医療のメリットは、何と言ってもお家で過ごせて、病院にはない自由があるということです。誰と会うか、何をして過ごすかも自由で、体調が許せばお出かけや旅行にも行けます。
医療に関しても、病院と比べて特別劣るわけではなく、モルヒネなど病院で使用できる薬はほとんど在宅でも使用できますし、医師や看護師が毎日訪問して患者さんのケアにあたることもできます。

デメリットは、病院と比べると医療チームメンバーの情報共有に時間がかかること(事業所が違うため電子カルテが共有できず、メールや電話などでやり取りしています)、人材が病院ほど豊富でないことが挙げられます(在宅ケアに携わっている心理士や音楽療法士はかなり稀です)。また、CTやレントゲンなどの画像検査はご自宅ではできませんし、採血などの検体検査の結果が出るのは翌日以降になります。加えて、1日に数回薬の投与量を調整しなければいけないとか、目が離せない状態の方、脊髄液に鎮痛剤を持続注入するなどの特殊な鎮痛方法を必要とする方はマンパワーや設備の問題で対応が難しい場合があります。

緩和ケア病棟・ホスピスと在宅療養のどちらを選択するか迷っています。

比べてみると、かなり違う環境です。迷われている理由は、「お家で過ごしたいけれど、何かあった時が不安だから」でしょうか。そうであれば、緩和ケア病棟の入院相談外来を受診し、緩和ケア病棟の入院待機登録をしておいて、お家で過ごしながら、どうしてもお家で過ごせない状況になれば入院を検討するのはどうですか?その辺も在宅医と相談しながら、決めていかれるのがいいと思います。

執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳


¹五十嵐尚子ほか : データで見る日本の緩和ケアの現状. ホスピス緩和ケア白書2018, 志真泰夫ほか(編), 青海社, 東京, p98-135, 2018

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