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院長対談 2023.03.17

まるこ訪問看護ステーション
看護師 渡邊律佳 / 渡辺江里子

むすび在宅クリニック 院長:香西友佳(こうざいゆか)
まるこ訪問看護ステーション 代表取締役/看護師:渡邊律佳(わたなべりか)
まるこ訪問看護ステーション 看護師/セラピスト(タラソテラピー):渡辺江里子(わたなべえりこ)

まるこ訪問看護ステーションは2021年8月1日に中野区に開設。小規模ステーションですが経験豊富なスタッフと地域の他職種の方々と『和を大切に、輪(えん)になって療養者を支援する』という理念をもとに『まるこ』と名付けました。
→公式サイトリンクhttps://maruco-hvst.jp

訪問看護師の必要性や強み

院長:香西友佳

香西:
在宅医療において訪問看護師はなくてはならない存在ですが、看護師さんの立場からその魅力を教えてください。

渡邊(律):
病院の病棟勤務と一番違うのは、訪問時間中は目の前の患者さんにつきっきりになってあげられることです。病棟では1人の看護師が5〜7名程度の入院患者さんを担当するので、1人のケアにあたっていても、途中で他の方から呼ばれることがしばしばあります。じっくり1人の患者さんに向き合えるのは訪問看護ならではで、最大の魅力です。

香西:
訪問看護師は人が好きな人だからこそできるお仕事ですね。

渡邊(律):
その通りですね。どれだけ患者さんに嫌がられても規定時間(通常30分〜60分)はご自宅で一緒に過ごしますね。これだけ時間をいただけるからこそ信頼関係を築くことができると思います。

渡辺(江):
私は人が好きですし、患者さんが愛おしく思えます(笑)。最初はツンケンされる方もいますが、徐々に心を開いてくれることに私は喜びを感じます。

香西:
そのコミュニケーション能力をぜひ学ばせてください。患者さんのお家に初めて行くときは緊張してしまいます。

渡邊(律):
初対面の時は自分も患者さんも緊張しますよね。つくづく、貴重なお仕事をさせていただいているなと感じます。

香西:
実際に患者さんと接する中で難しかったことはありますか?

渡邊(律):
病院で不自由な思いをされた方はとても身構えられていることがあります。初回は今までどういう思いをしてきたかを感じ取ることを大事にしています。患者さんの気持ちを理解して、心を開いてもらうというのが一番大事で一番難しいと感じます。

渡辺(江):
患者さんから全然大丈夫じゃなさそうなのに何に対しても大丈夫と言われたり、何も質問をされなかったりすると、かえって心配になります。信頼関係を築くことが前提ではありますが、どんなに些細なことでも聞いてもらえるとありがたいです。

香西:
在宅では患者さんに関わる人が多く、医師、看護師、ケアマネージャー、ヘルパーなどいろいろな人がいるので、聞きやすい人に聞いてもらえるのが一番ですね。私たちは誰が受け取ったサインもしっかり共有して、患者さんのためになるよう働きかけないといけないですね。訪問看護師として働く上で大事にしていることは何ですか?

渡辺(江):
ご自宅=生活の場なので、そこに入らせていただいているという認識を忘れないこと、できることはなんでもやる、ということでしょうか。清潔ケア一つとっても、ただ体を拭くだけでなく少しマッサージをしたり、お顔を拭くのも温かいタオルを使ってあげたりすると、それだけで患者さんから「すごく気持ちいい」と言ってもらえることがあります。自分がどうされたら嬉しいかを考えて小さな気配りを忘れないようにしています。

渡邊(律):
私が大事にしているのは、患者さんが何を求めているか意識しながらお話をすることです。中には残された時間が短い患者さんもいて、穏やかな時間を過ごしてもらいたいし、何かやりたいことがあればそれをできるように自己犠牲はいとわず全力で叶えたいです。結果、叶わないこともありますが、最後まで希望を持っていてほしいです。

香西:
素晴らしい心がけですね。私も将来お二人のような訪問看護師さんに診てもらいたいです。

対談記事 まるこ訪問看護ステーション

“訪問診療×訪問看護”の連携における課題

香西:
医師と看護師の連携は欠かせません。しかし、現状では在宅医療において完璧な連携が取れている事業所は多くはないです。同じ病院に勤務していれば同じ電子カルテを使って情報を共有できますが、在宅だとほとんどの場合、医師も看護師も薬剤師も介護士もケアマネージャーも別々の事業所に所属しており、職種間をつなぐ共通システムがないため、一つ一つ個別に連絡しなければなりません。医療・介護業界はIT化が遅れており、いまだに基本のコミュニケーションツールは電話とFAXです。在宅医療向けの職種間連携ツール(グループを作り、非公開でメッセージのやり取りができるもの)はありますが、まだ一部の事業所しか導入していません。また、患者さんごとに患者さんをサポートするメンバーは異なり、医療・介護者同士が全員初対面の場合もあります。問題が山積です。

渡邊(律):
いかに医師とうまく連携するかは本当に課題ですね。これは仕方ないと思いますが、クリニックごとにルールが違い、直接医師と話せる場合と、クリニックの看護師や事務を通してしかやり取りができない場合があります。後者だと意図がうまく伝わらず、齟齬が生じることもあります。どうしても医師は多忙で、電話に出られないことが多いのはやむを得ないと思いますので、連携ツールを導入して、チャットで医師と直接やり取りができれば、看護師としてもありがたいです。

香西:
医療従事者同士の顔が見える関係性を築き、タイムリーなやり取りができる環境を作れば、より良い在宅医療が提供できると思います。

渡辺(江):
医師よりも看護師の方が患者さんにとって身近な存在で長くそばにいるため、意外なところでポロっとこぼれる本音を聞けることもあります。そういうこともぱっと医師に伝えられるといいですね。

香西:
患者さんのそういう本音こそ一番共有しないといけないことですよね。でも、私たちがお互いを全然知らないと、緊急性のないことや医学的な対応が必要ないことでクリニックに連絡していいのだろうかって看護師さんが躊躇しちゃうこともありますよね。そういう壁をなくしていきましょう。患者さんは看護師に伝えたら医師にも伝わっていると思っているので、それが医師に伝わっていないと、患者さんとの信頼関係が根底から崩れてしまいます。あるいは、患者さんの中には相手によって言うことが変わる方もいらっしゃって、それはどれもその方の一面でどれも真実なのですが、医療介護者間の信頼関係ができていないと、表面的な言葉に捉われてチームが壊れ、いい医療が提供できなくなることもあります。そうならないために、近い事業所同士で普段からコミュニケーションを取って顔なじみになりお互いの考えや行動がわかる関係性を築くことが大切ですね。

対談記事 まるこ訪問看護ステーション

将来の夢

香西:
私の夢は、歳を重ねてからも大切な人たちと楽しく過ごせる「場」を作ることです。一度きりの人生、最後の最後まで遊びたい。今の世の中だと、歳を取ればとるほどコミュニティから外れ、自分の一人の時間が増えてしまう傾向にありますが、それを変えたい。作りたいのは、単なる老人ホームではなくて、皆がやりがいを持って生き生きと過ごせて、人と人のつながりがあって、うまく言えないのですが、そこで何かが循環して完結しているような、生きたコミュニティです。高齢の方がケアを受ける人というレッテルを貼られるのは嫌で、そもそも高齢者と一括りにされるのも嫌なのですが、とにかく、ひとりひとりがその人の役割を果たして自己表現できる、そんな「場」を作って私もそこに入りたいと思っています。

渡邊(律):
素晴らしいビジョンですね。将来ぜひ私もそちらでお世話になりたいです(笑)。愛猫がいるので動物も一緒に暮らせるところだとより魅力的ですね。

香西:
ネコちゃんも入れるように構想しておきます(笑)。ルールを設ける方が管理する側は簡単だけど、自分が入ることを考えると絶対自由がいいですよね。余生を楽しむ段階ではわがままくらい許して欲しいです。そうなると、患者さんのわがままもできる限り聞いてあげたいと思います。お二人は将来の夢はありますか?

渡邊(律):
うーん、私もそういった施設やコミュニティを作るのはいいなと思っていました。具体的に考えたことはなかったですが。

香西:
それは嬉しいです!ぜひ一緒にやっていきましょう。

渡辺(江):
私は予防医学に興味があって、病気になる前に心も体もケアしてあげられたらなと思っています。

香西:
それも大事な観点ですね。お二人と話していると夢が膨らみます。本日はありがとうございました。

対談記事 まるこ訪問看護ステーション

ファシリテーター・編集:児玉紘一
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳
対談日:2023年1月15日

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