院長対談 2026.11.02
院長対談 むすび在宅クリニック 松本医師

このコラムの紹介
2026年9月、むすび在宅クリニックに松本崇平医師が加わりました。呼吸器内科を中心に病院で経験を重ね、患者さんがどのように暮らしたいかを大切にしながら、訪問診療に取り組んできた医師です。
院長の香西とは、救急医療の現場で共に学んだ後期研修医時代の同期。それぞれの場所で約10年にわたり経験を積み、今度は在宅医療の現場で一緒に働くことになりました。
「医療が患者さんの人生の邪魔をしないこと」を目指す院長香西と、「患者さんの困りごとに耳を傾け、そっと寄り添うこと」を信条とする松本医師。診療への向き合い方にはそれぞれの個性がありますが、患者さんの思いを大切にしたいという気持ちは共通しています。今回の対談では、お互いの第一印象から、訪問診療で大切にしていること、医師2名体制で目指すこれからのむすびについて語り合いました。
二人の出会いとお互いの印象
香西:私たちは、都立墨東病院の後期研修医(シニアレジデント)の同期でした。医師3年目から5年目までの約3年間一緒に働いています。松本先生から見た私の印象って、どんな感じでしたか?
松本:めちゃくちゃバイトをしている先生というイメージでしたね。救急救命センターの激務をこなし、救急科の当直が月5〜6回。それに加えて10回ぐらいバイトの当直に行っているような、バイタリティーにあふれた人というイメージでした。
香西:ありがとうございます。墨東時代に5連直(5日間連続の当直)を経験して、月曜日の朝に出勤して土曜日に帰るというのをやりました。そのときに「あ、これが過労なんだな」というのを身をもって理解したので、それ以降、私は働き方を調整することができたかなと思っています。当時は、自分がどこまで働けるのかわからなかったので、限界に挑戦できた20代でしたね。
私から見た松本先生の印象は、すごく真面目な印象です。真面目ですし、机がきれい。整理整頓していて、脱ぎかけの服が置いてあったりもしない。本も本棚にきちんと並べられている、実直な先生なんだなというふうに思っていました。
診療で大切にしていること
香西:現在はキャリアを積んで、それぞれに訪問診療の世界に飛び込みましたが、松本先生が診療をするうえで、特に大事に思っていることはどんなことですか?
松本:患者さんに寄り添っていくと言いますか、患者さんの困っていることやニーズをくみ取って、それに自分の診療を寄せていくことです。患者さんの言うことを、そのまま全部そのとおりにするわけではないですけれど、こちらの医療的な考えを押しつけるのでもなく、患者さんの困りごとを解決し、希望に近づけるために、自分がどうアプローチできるか。自分のほうが変わるという、そういうスタンスを大事にしています。
香西:患者さんの思いをまず聴くことを大事にされている、ということですね。
松本:そのためには、自分がぐいぐい行きすぎず、偉ぶるでもなく、いい具合に距離を縮めていって、ちゃんと向き合う。信頼していただくことが大事になるので、その関係を築いていくところは、すごく大事にしています。
香西:私も、患者さんの願いをできるだけかなえてあげたい。患者さんのことをまずお聴きしたいというところは、松本先生と同じかなと思います。
私は、病気になったとしても、例えば終末期だとしても、できる限り医療が患者さんの人生の邪魔をしないということが大事かなと思っています。どうしてもお困りの症状があるときは、医療がメインで入っていかなければいけないタイミングもあるのですが、症状が落ち着いたら、できるだけ脇役として、傍らにそっと寄り添って、患者さんを見守るような立場でありたいと思っています。
また、当院にご依頼いただく患者さんの場合は特にそうかもしれないのですが、諦めていない、まだまだ頑張りたいという患者さんがすごく多いのです。医学的に難しいことがあっても、医師のほうから先に可能性を閉ざさず、患者さんが大切にしていることをかなえる方法を、一緒に考えていきたいと思っています。
病状によっては、命を延ばすことが難しい場合もあります。それでも、患者さんに大切にしたいことや、やりたいことがあるなら、食べることも含めて、それをかなえる方法を一緒に考えていくことを大事にしています。なので、創意工夫とかアイデアを出すとか、そういったところも重視しています。

松本先生の入職による変化
香西:それぞれキャラクターがあると思うんですけれど、松本先生に入っていただくことで、むすび在宅クリニックはどういうふうに変わるでしょうか?
松本:香西先生は、できることをどんどん積極的にやって、どんどん動かしていくスタンスだと思うんですけれど、僕はどちらかというと、患者さんのニーズありきで、そこにちょっと寄せていって、伴走していく。目標は同じでも、アプローチは少し違うのかなというところはあります。
患者さん側でも、どちらが合う・合わないがあると思うので、方法論が多いほうが、より患者さんのニーズを満たせるのではないかなというのはあります。そういう意味で、複数の医師がいることは、いろいろな患者さんに対応できる幅が広がっていいのではないか、というのが一つです。
もう一つは、どちらかが出ているとき、どちらかが休んだり、特に夜中や休日を分担できたりすることです。忙しいときも、ずっと働き詰めだと気力や体力を使ってしまう。それを回避できるといいますか、備えもできるので、より持続可能性の高い診療体制を築けるのではないかと思います。そういうところも含めて、メリットがあるのではないかと思っています。
香西:ありがとうございます。特に2点目に関しては、「先生、倒れないでよ」ということを患者さんから言われることが、今まで多くありました。
元気なので大丈夫だと思っているんですけれど、やはり医師が1人体制のままだと、患者さんも「香西先生に何かあったら」と心配されていたのかなと思います。そこは松本先生が入ることで、患者さんの心配を軽減できるのではないかと思っています。
訪問診療は24時間365日対応ですので、手厚いサポート体制があることは、患者さんにとっての安心になるのかなと思います。
あと、松本先生の呼吸器内科の経験を在宅でも生かせるよう、入職に合わせてレントゲン装置も導入しました。PICC挿入や、肺炎や骨折の診断など、できることの幅が広がったかなと思います。

松本先生の経験と得意とする診療
香西:私が知らない10年の間に、どんな経験をされていたのか、今どんな診療を得意とされているのか、教えていただけますか?
松本:僕はそのまま墨東病院で11年間勤務していました。後期研修医の間は循環器内科、感染症科、消化器内科などでも研修を積みましたが、4年目ぐらいからは、ずっと呼吸器内科を専門にしてきました。
呼吸器と一言で言っても、がんだけではなくて、喘息や、アレルギー疾患、間質性肺炎など何でも診ていました。また、墨東病院の内科当直では脳梗塞や尿路感染症などあらゆる内科の疾患の初期対応を行うこともありました。
呼吸器内科の中では、気管支鏡やCTの読影など専門的なことも行いつつ、自分の診療の強みは傾聴と緩和ケアだと思っています。がんの患者さんに対しても、いかに抗がん剤をやっていくかというところよりも、患者さんに寄り添って、その患者さんがどういう生活をしていたいかというところや、病状説明をきちんとやって治療方針を決めていくこと。あとは、積極的な治療を行わずに緩和ケアに専念する方たちに寄り添っていくこと、そしてお看取りも大切にしてきました。そういった患者さんにじっくり向き合う診療スタイルが自分に向いていて、そのフィールドが病院ではないところにあるのではないかと思い、訪問診療を始めました。
香西:まず、同じ病院に11年勤務できるところがすごいなと思います。なかなか今の時代、同じ病院でずっと働いている先生のほうが少ないじゃないですか。それができているところに、松本先生の根性や忍耐強さ、人付き合いのよさが表れているのではないかなと思います。
また、呼吸器というのは専門分野がすごく広いというか、感染症からがんまで、いろいろな病気に関わるので、そのなかで訪問診療でも必要な、いろいろな状況に対処する力が備わってきているのではないかなと思います。
私は松本先生と違って、いろいろなことを勉強するために、救急のあとはリハビリ科に行って、内科に行って、緩和ケアをやって、訪問診療というふうに、働く場所も専門も変えてきました。松本先生とは、今まで歩んできた人生が全然違うなと思います。それぞれに、会わない間の10年で学んできたことを、これから訪問診療に生かしていけるかなと思います。
松本:いろいろ教えてもらいたいと思っています。
香西:何かあったときに動じない心のベースは、墨東病院の救急で身についた気がしますね。本当に救急外来って、毎日ずっとそこにいても、「何だ、これは」と思うようなトラブルや病気、変わった事態が毎日のように発生するじゃないですか。そこで勤務していたおかげで、何かあっても動じない心や、「何とかやれる」という根性が、少し身についた気はしますね。松本先生と一緒に過ごしていた、医師経験3年目から5年目というのも、私にとっても松本先生にとっても、大きな礎になっているのではないかなと思います。

目指す医師像とむすびで成し遂げたいこと
香西:最後に、これからどんな医師を目指していきたいのか。むすび在宅クリニックで何を成し遂げていきたいのか、教えていただけますか?
松本:今の医師としてのスタイルは、あまり変えるつもりはありません。もちろん今後、医療が変わっていくところをアップデートすることは、常にしなければいけないと思っています。ですが、在宅医として患者さんに寄り添っていく。その根本は、このままずっと続けていきたいと思っています。
香西:訪問診療をしていくなかで、特にこの1年、訪問診療を中心にやってきて、病院で働いていたときと、考え方が変わった部分はありますか?
松本:だいぶ変わりましたね。病院の場合は、病院の看板を背負っているところがあります。逆に患者さんも、僕を「○○病院の松本だ」と見てくれるので、そのブランドで評価してくれる部分といいますか、それで底上げしてもらっている部分もあります。「そこで働いている先生だ」ということで、信頼してもらえる楽さはありますけれど、もっと僕自身として向き合いたいと思いました。やりがいがありますよね。自分の技術や医療知識、そういうところで信頼を勝ち取っていかなければいけないという難しさと、楽しさ、やりがいを感じましたので、今後も頑張っていきたいと思っています。
香西:そうですね。病院の場合と違って、患者さんのフィールドに、私たちがお邪魔する側なので。相手のお家に行くからこそ、私たちが生身の人間として見られるのは、訪問診療ならではの診療かなと思います。そんななかで、人として、医師として何ができるかというところは、訪問診療ではとても重要になってくるのかなと思います。
松本先生に入職してもらったことで、私も心強い味方ができました。何かあったときに医師同士で相談できるところも大きいですし、私の苦手な分野をサポートしてもらえることも、すごく心強く思っています。
むすび在宅クリニックは、これからも、お家で過ごすことが大好きな患者さんのために頑張っていきたいと思います。何か困っていることがありましたら、ぜひご相談ください。今日はありがとうございました。
松本:ありがとうございました。
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳