コラム 2026.08.07
訪問診療の費用はいくら?<2章>

目次
このコラムの紹介
訪問診療の請求は、医師が伺った時の診察料だけではありません。療養計画や24時間の連絡体制を評価する在宅時医学総合管理料、訪問診療料、介護保険の居宅療養管理指導費などを組み合わせて計算します。第2章では、2026年8月時点の点数を使い、月2回訪問の基本額を1割・2割・3割ごとに確認します。さらに、臨時往診、検査や処置、看取り、薬局・訪問看護、交通費など、通常月より費用が増減する場面も整理します。金額の内訳を知り、医療機関へ確認する時にお役立てください。
もっと詳しく知りたい方のために、診療報酬の計算の仕組み
医療・介護とも1割負担の場合の費用の目安
4,705円 + 1,780円 + 598円 = 基本計算7,083円

随時発生する費用
※平日22:00〜翌6:00および土日祝日の訪問では、交通費4,000円(税込4,400円)をいただいています。
※金額は2026年8月時点の当院の算定例です。診療報酬改定や算定条件により変動します。
訪問診療の請求は、主に次の4つから成り立っています。
・「在宅時医学総合管理料」:療養計画、24時間の連絡体制、多職種連携、薬の管理などを月単位で評価する
・「在宅患者訪問診療料」:定期的に医師がご自宅へ伺って診察する
・「居宅療養管理指導費」:要介護・要支援認定のある方に、ケアマネジャー等へ医学的な情報や助言を伝える介護保険の費用
・病状や医療内容に応じて加わる「往診料」「検査・処置」「在宅療養指導管理料」、薬剤・材料、交通費などの保険外費用
月2回・特別な医療行為がない月の基本計算
※表は、当院(連携型機能強化型在宅療養支援診療所・1のア)が、ご自宅へ月2回訪問し、同じ建物の診療対象者が1人で、別に定める状態(難病等)に該当しない方を診療した場合の算定例です。在宅時医学総合管理料や外来・在宅ベースアップ評価料は、医療機関の届出区分、同じ建物で診療する人数、訪問回数などにより異なります。
1点は10円です。表の「10割の総額」は医療保険・介護保険が負担する分を含む金額で、患者さんが全額を支払うわけではありません。医療保険と介護保険の負担割合は別々に決まるため、「医療3割・介護1割」のような組み合わせもあります。
在宅時医学総合管理料は、医師が訪問した時間だけの費用ではありません。訪問していない日にも、病院からの情報を確認し、薬局や訪問看護師と相談し、病状が変わった時に対応できる準備をします。ご本人が家で過ごす時間全体を支える医学管理に対する費用です。
外来・在宅ベースアップ評価料と外来・在宅物価対応料は、医療従事者の処遇改善や物価上昇への対応を診療報酬で評価する項目で、上の基本計算に含めています。当院の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、継続的賃上げ実施施設として、2026年6月診療分から同一建物居住者等以外の訪問診療1回につき107点です。外来・在宅物価対応料は1回3点です。
このほか、当院の届出状況や情報連携体制、患者さんの病状に応じて、在宅医療DX情報活用加算、電子的診療情報連携体制整備加算などが加わります。実際の請求額は、表の基本計算より増える場合があります。
なお、特定医療費(指定難病)受給者証を利用している方は、対象疾病に関する居宅療養管理指導など一部の介護保険サービスが、指定難病の月額上限に合算されます。一般の高額療養費とは扱いが異なるため、第3章・第4章で詳しく説明します。
費用が増減するのはどのような時でしょうか
診療を始めた月
初月は、診療を始めた日、初診の方法、訪問回数によって金額が変わります。病院からの情報を確認し、療養計画や緊急時の対応を整えるための加算がつくこともあります。算定する項目ごとに扱いが異なるため、必ず日割りになるわけではありません。
臨時の往診や、検査・処置が必要になった時
予定した定期訪問とは別に、発熱、息苦しさ、痛み、転倒などで医師が臨時に伺うことを「往診」といいます。2026年の往診料の基本部分は720点、10割の総医療費で7,200円です。ここに緊急、夜間・休日、深夜の加算、採血、点滴、処置、薬剤などが加わります。
費用が心配な時は、連絡を控えるのではなく、電話の時点でその気持ちも伝えてください。今すぐ診察が必要か、翌日まで待てるか、看護師の訪問で対応できるかを、病状とご希望の両方から考えます。
終末期のケアや看取りを行った月
人生の最終段階では、訪問回数が増え、持続注射、在宅酸素、点滴、症状緩和のための薬剤調整などが必要になることがあります。また、最期まで在宅で診療を行った場合には、在宅ターミナルケア加算や看取り加算などが算定され、普段より請求額が高くなることがあります。
これは、亡くなったこと自体に費用がかかるという意味ではありません。最期の時期に行った診療、いつでも連絡を受けられる体制、苦痛を和らげるための調整、看取りまでの支援を評価する仕組みです。医療保険の対象となる費用には、高額療養費の上限が適用されます。
薬局、訪問看護、リハビリなどを利用する時
処方された薬の代金や訪問薬剤管理指導の費用は薬局から、訪問看護の費用は訪問看護ステーションから請求されます。訪問看護は、年齢、病名、病状、特別訪問看護指示書の有無などにより、医療保険になる場合と介護保険になる場合があります。
交通費や保険外の費用
往診に伴う交通費は医療機関ごとに扱いが異なります。当院では、平日9時~18時の定期訪問・往診は交通費をいただいていません。平日22時~翌6時および土日祝日の訪問では、交通費として4,000円(税込4,400円)をいただいています。
診断書などの文書料、予防接種、健康診断、おむつ、食品や栄養補助食品、保険適用外の物品なども、原則として高額療養費の対象にはなりません。
第2章のまとめ|基本額と、増える可能性がある費用を分けます
訪問診療費は、月単位の医学管理、定期訪問、介護保険の居宅療養管理指導費などを組み合わせて計算します。臨時往診や検査・処置、看取りなどが必要な月は金額が増えますが、費用が心配な時も連絡を控える必要はありません。病状とご希望に加え、負担への不安も医療機関へお伝えください。次の章では、医療費が高くなった時の高額療養費と、介護保険の負担上限を整理します。
情報の基準日・参考資料
本稿は2026年8月時点の制度・診療報酬に基づいています。高額療養費の自己負担限度額は、2026年8月診療分からの内容を記載しています。今後の制度改正や自治体の取扱いにより変更される可能性があるため、実際の適用区分・申請方法は、加入する医療保険、住民票のある区市町村、各医療機関へご確認ください。
・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
・厚生労働省「令和8年度介護報酬の算定構造」
・厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳