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院長対談 2023.10.17

司法書士 高見翔 行政書士 青野佑一郎

司法書士 高見翔、行政書士 青野佑一郎 対談画像

<写真中央> むすび在宅クリニック 院長:香西友佳(こうざいゆか)
<写真右> 高見翔司法書士事務所 司法書士:高見翔(たかみしょう)
<写真左> 三鷹武蔵境通り法務行政書士事務所 行政書士:青野佑一郎(あおのゆういちろう)

高見翔司法書士事務所の紹介:一般企業を退社後、2010年より都内司法書士事務所に入所。登記業務のほか成年後見業務に従事する。司法書士試験合格後、2019年より練馬区にて高見翔司法書士事務所を開設し現在に至る。これまで経験した登記業務全般や成年後見業務のほか、遺言書作成支援、任意後見契約を含めた死後事務委任契約など予防法務を経験。それぞれのライフステージ・環境にあわせて様々な法的支援をすることで地域社会を支えることができるよう日々奮闘中。
→公式サイトリンクhttps://www.takami719.com

三鷹武蔵境通り法務行政書士事務所の紹介:2017年より三鷹・武蔵野地域に根差した行政書士事務所として、個人の遺言・相続・成年後見や就労ビザの取得の申請をサポートしたり、会社や一般社団法人・NPO法人等の設立や許認可手続き、融資や補助金申請の代行を行う。また、独立まで大手介護事業者の法務部門の責任者をしていたことから、契約書の作成・リーガルチェックも得意としており、「リガラボ」(https://legalabo.com/)というサービスを展開し、全国の企業や個人事業主からご依頼を頂いている。
→公式サイトリンクhttps://aonoyuichiro.biz

はじめに

当院は板橋区、練馬区、豊島区、中野区を中心に訪問診療を行っているクリニックです。特に、がんなどの重篤な疾患を抱えていて、お家で緩和ケアを受け、最期までお家で過ごしたい患者さんからご依頼をいただくことが多いです。そのため、必然的に患者さんが自分自身でいろいろな判断ができなくなる時期にも関わることも多く、患者さんのお金の管理や代理意思決定を誰に任せるのか、死後の手続きはどうするのかといった問題に患者さんやご家族が直面しているのを目の当たりにします。医療者が直接口を出す問題ではないのですが、だからと言って知らん顔はできません。患者さんの人生が最期まで豊かなものであり、できるだけ心残りを少なくしてもらうためにも、この辺のことは知識としては知っておき、患者さんやご家族が助けを求めてきた時にしかるべき専門家を紹介できる体制を整えておきたいと思っています。そういった経緯で、今回顧問弁護士に、司法書士の高見先生と行政書士の青野先生をご紹介いただきました。

行政書士・司法書士の役割と違い。まずどこに相談したら良いのか?

香西:
まず、基本的な質問で恐縮ですが、行政書士と司法書士の違いを教えてください。

青野:
行政書士は、「頼れる街の法律家」として、市民の方や中小企業の経営者の相談を受け、各種申請の代行を行っています。

高見:
司法書士は、不動産登記と会社等商業法人登記申請をメインに行っているほか、裁判所提出書類の作成ができます。認定司法書士には簡易裁判所での代理権も与えられています。

青野:
行政書士も、司法書士も成年後見の分野では同じように活動していますが、司法書士の場合は家庭裁判所への申立て書類の作成を行うことができるのに対し、行政書士は申立て書類の作成を行うことができないため、実際には社会福祉協議会や権利擁護センターの職員の方に協力をしてもらっています。

香西:
素人にはなかなか違いを理解するのが難しいですね。当院から書士さんに相談したいのは、福祉関連の手続き代行や成年後見人、死後の手続き、相続・遺言のことなのですが、困っていることはあるけれど制度のことなど何もわからない場合に、まず誰にご相談すれば良いでしょうか?

高見:
疾病や経済的な問題を抱えている高齢者の場合ですと、地域包括支援センターが関わっていて、担当のソーシャルワーカー(生活相談員)が患者さんの状況を把握していることが多いです。ですので、困り事はまずその方に相談されるのが良いかと思います。私たちにも地域包括支援センターや社会福祉協議会から後見などの依頼が来ることがよくあります。

青野:
あるいは、これまで地域包括支援センターとの関わりがない方の場合でしたら、まず私にご相談いただければ、内容をお聞きして、問題を解決するのに見合った人に繋ぎます。同じ行政書士でも得意不得意がありますし、書士同士のネットワークがありますから。書士の初回相談は無料ですから、費用の面でもご安心ください。
他の地域でお困りの方は、都内の行政書士を探す場合はヒルフェ(https://hilfe.jp/)、司法書士を探す場合にはリーガルサポート(https://legal-support.or.jp/)から検索いただくのが良いかと思います。

香西:
生活保護の申請、自己破産申請の手続きは業務に含まれますか?

青野:
生活保護申請は、扶養義務者または同居する親族のみ代理が可能です。自己破産は弁護士が担当します。しかしながら、管轄外の業務に関してもご相談には乗りますので、まずご連絡いただければと思います。

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判断能力が低下した場合の財産管理、身元引受、医療同意は誰に依頼できるのか

香西:
判断能力が低下した患者さんの財産管理と身元引受人、代理意思決定者の点で困ることがあります。どうしたら良いですか?
 
高見:
本人が自分自身で財産を管理することができなくなり、代理で行える家族もいない場合、財産を代わりに管理する後見人が必要になります。具体的には本人のお金から医療・介護費などを支払ったり、さまざまな契約を代行したりするのが後見人の主な役割です。

後見制度には法定後見と任意後見の2種類があります。法定後見は本人の判断能力が低下してから、家族または行政が申立てをして、家庭裁判所が選んだ人に任せる制度です。判断能力がどの程度低下しているかにより、軽い方から「補助」「保佐」「後見」の3つに分かれます。

もう1つの任意後見は、本人の判断能力がある間に本人が決めた人と契約をして、本人の判断能力が低下した段階で任意後見を開始する制度です。任意後見には、判断能力があるうちは見守り契約から始め、亡くなった後の死後事務委任契約も結んでおくという、「移行型」の任意後見契約もあります。

後見制度では、身元引受人や医療同意ができるかどうかという悩ましい問題があります。

任意後見の場合は、ご本人に判断能力があるうちに身元引受人や医療同意に関する意思表示を明確にしていれば、後見人がそれを関係者にお伝えすることができます。しかしながら、法定後見の場合は後見人が代わりに意思決定を行うことはできず、家族や親族にお願いすることになります。身寄りのない方々の場合には、医師や看護師さんたちと話し合いながら、本人にとって最善な方法をみんなで決めていく形になります。

香西:
法定後見は具体的にどのような流れでスタートするのでしょうか?

青野:
私たちへの相談やご依頼は、地域包括支援センターや社会福祉協議会からいただくことが多く、その前段階で区や市のケースワーカー(相談員)がご利用者に関わっています。財産管理等も、権利擁護事業としてご本人の同意を得ながら行われています。
介護保険サービスが必要となったり、不要な保険契約を解約したいとなったりした場合には、法定後見として、その方の認知機能・判断能力の程度に応じて、補助・保佐・後見を開始し、私たち専門職による後見がスタートします。

香西:
なるほど、ケースワーカーさんの役割からさらに踏み込んで法律行為が必要になった場合に行政書士さんに依頼が行くのですね。いきなりスーツを着た先生たちが訪問すると、患者さんは驚いてしまうのではないですか?

青野:
そうですね。ですので、最初は背広を脱いで伺ったり、ご利用者に気軽に話して頂けるよう配慮はしたりしています。いきなり私たちだけで訪問することはなく、ご本人と信頼関係のある地域包括支援センターのケースワーカーに同行し、その紹介という形でお話させていただくので、なんとか話が進むことが多いです。

香西:
補助・保佐・後見のどれにするかは誰が決めるのですか?

青野:
補助・保佐・後見の類型については、医師の診断書の中でも意見をいただき、生活の様子等も記載して申立てを行いますが、家庭裁判所の調査官による本人面接や候補者面接も行われる中で、最終的に家庭裁判所が決定します。

香西:
自分以外の誰かに自身のお金の管理を任せることに抵抗がある方も多いのではないでしょうか?認知症の患者さんの中には病識がない方も多いですし、どうやって同意を得るのですか?

青野:
そのご利用者が信頼している人に同行し、その方に紹介いただくことで、私のことも信用していただけることが多いです。申し立てる前に1度か2度、顔合わせや打合せを行って、だいたいはそれで「わかりました」と仰っていただけます。
権利擁護事業で既に預けていただいている方の場合と比べて、ご自身で保管していたものを預ける方の場合は、後日、「通帳を返してほしいのですが」と連絡をいただくこともあります。そういった場合には、お気持ちに理解を示し、手元にお金が無くて不安になることがないよう、他の支援者とも打合せをしながらそのような状況を解消していくようにします。逆にご本人が持っていることでお金が減ってしまう心配があることも伝えて理解していただくように努めています。

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行政書士・司法書士の費用について

香西:
行政書士・司法書士さんの費用はいくらくらいかかるものなのでしょうか?

高見:
初回の相談は無料で行っています。2回目以降は受任が前提で動くことにしています。契約の内容によって、費用はさまざまです。

香西:
例えば、訪問診療は医療保険で行なっていますから、どのクリニックに依頼したとしても同じ医療行為・訪問頻度であれば金額に大きな差はありません。強化加算をとっているクリニックかどうかで少し差が出る程度です。書士さんの報酬は一律ではないと聞きますが、基準額や相場のようなものはあるのでしょうか?

高見:
特に基準額はないので、書士でも相場や平均価格はわからないですね。初回の相談は無料のところが多いので、何箇所か相談に行かれて、見積もりをもらって検討されても良いかと思います。何をお困りかによって、選択肢と、ご依頼いただく場合の金額や報酬の計算方法を提示させていただきます。

香西:
金額が全然想像がつかなくて怖いのですが、例えば、移行型の任意後見契約にはどれくらいの報酬がかかるのでしょうか?

青野:
移行型の任意後見契約とは、ご利用者が元気なうちから見守り契約をして、判断能力が低下した段階で後見契約の効力を発動し、お亡くなりになった後は死後事務委任契約に移行するという契約ですが、ご利用者によっては何十年にも渡る契約になることもあります。どれくらいのことを依頼されるかによって報酬は一概には言えないのですが、私の事務所のざっくりした金額ですと初めの契約費用が公正役場に支払う分も含めて15万円程度、見守り契約期間に2ヶ月に1回面会したとして年間6万円程度、後見契約に移行してからは行う内容により契約で決めます。後見人には後見監督人がつき、後見監督人の報酬もご利用者負担になりまして、それはご利用者の資産額にもよるのですが、おおよそ年間24万円〜です。法定後見の場合、家庭裁判所が決める後見人の報酬は後見監督人よりは高くなります。

香西:
患者さんが亡くなった後の死後事務の手続きにかかる費用や死後事務委任契約の費用はどのように受け取るのですか?

高見:
死後事務委任のみ依頼されるケースは少なく、任意後見契約とセットで進める場合が多いので、亡くなる前に手続きにかかる費用を預かっておいたり、相続人から受け取ったりします。死後事務委任を依頼されるケースでは身寄りがなく相続人と疎遠な方が多いので、きちんと契約を交わしておけば死後事務の費用のことで後々トラブルになることはほとんどありません。

香西:
日本人は契約を好まない方が多い印象ですが、実際にどれくらいの割合の方が任意後見を契約されてますか?

青野:
そうですね。地域包括支援センター等から「任意後見について説明をしてほしいと言われているのでお願いします」と言われて、ご利用者に説明にいくことはよくありますが、それで契約となることは少ないです。やはり、費用が掛かることを避けたい方が多いようです。

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福祉に関わる士業のやりがいとは

香西:
ここまでお話をお聞きして、行政書士さんも司法書士さんも業務の幅が広く、大変な職業だと感じました。どんなことをやりがいに励んでいらっしゃるのですか?

青野:
地域で困っている方のお役に立てているという地域貢献と、ご本人の在宅での生活をさまざまな職種で連携して支え合っているというところに喜びややりがいを感じます。施設に入所された方の場合も、ご家族に代わって支払い等を行いながら、面会したり施設職員に電話で様子を訊いたりしてご家族に伝えていますが、そういったご家族とご本人を繋ぐ役割にもひとの縁を感じます。

高見:
私も地域貢献にやりがいを感じています。誰でもができることではなく、有資格者として人の役に立てることに誇りを持っています。

香西:
ありがとうございました。ご相談させていただく機会も多々あるかと思いますので、その際にはよろしくお願いいたします。

青野:
ありがとうございました。医師と士業で連携すれば、人生の最期に関わるさまざまな問題を解決できると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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編集:児玉紘一
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳
対談日:2023年10月02日

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