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patient's family 患者さんのご家族の方へ

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ここに辿り着くまでに、ご家族の方も患者さんとご一緒にたくさんのことを経験され、思い悩まれてきたことと思います。一番つらいのは本人だからと、患者さんの前では気丈に振る舞い、自分の時間や体調はそっちのけで、患者さんのために尽くされてきた方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。本当にすごいことだと尊敬します。

在宅療養という道を選ぶこと自体に、まだまだ不安がたくさんあると思いますが、なんでも相談できる相手ができるのだと気軽に捉えてください。在宅療養を選択するからと言って、これまでの主治医の先生との関係が切れるわけではありません。これからのことは、一緒に話し合って決めてきましょう。その上で、通院や入院に戻るのも1つの選択肢です。

私たちは、患者さんだけでなく、ご家族の気持ちも大切にしたいと考えています。不安なこと、どうしたらいいかわからないことなど、なんでも私たちにぶつけてください。

患者さんのご家族の方へ

例えば、ご家族の方からよく聞く悩みや相談事にはこんなものがあります。

代理意思決定者の負担。決めてと言われても困る。

代理意思決定者とは、患者さん本人が自ら意思決定ができなくなった時に代わりに医療に関する意思決定を行う人のことを言います。海外では法律で誰が代理意思決定者になるのか、近親者の中で優先順位が決まっている国もありますが、日本では明確なルールはなく、事前に患者さん自身が決めていない場合は、関わりが深く近隣に住んでいる近親者が選ばれる傾向にあります。はっきりと「あなたが代理意思決定者です」と言われることはあまりなく、「キーパーソンですね?」「ご家族の方ですね?」くらいの確認で、医師から重要な話を聞かされ、あまり時間の猶予のない中で何か決断を迫られる、そんな場面は救急の現場でよく見られます。

今でこそ、がんなどの生命を脅かす病気も本人に告知する時代になりましたが、実は1990年前後までは本人へのがんの告知率は15%程度ととても低い割合で、治療方針はご家族と医師が相談して決めていまし。その時代のご家族は、最後まで本人に嘘をつき続けることもあり、今とはまた違ったつらさがあったと思います。

現在は、医学の進歩や個人の自律性を重んじる文化が浸透したことなどを背景に、病気の治療法についても患者さんが自分で選ぶ時代になってきています。しかしながら、病名告知はしていても、「死が差し迫っていることを患者に伝えるか」については、本人に伝える割合が4.8%と非常に低いのが現状で。病名告知と同じようにこれも伝えることが当たり前になっていく可能性もありますが、日本の察し合う文化を鑑みるに、少なくともこれから数十年は積極的に伝える風潮にはならないと思われます。そのため、今後も差し迫った状況でご家族が判断を求められることは多くあるでしょう。 

ご家族の方が代理意思決定をする上で大事なことは「患者さんがこの場にいたらなんと答えるかという視点で考えること」です。ご家族としてのお気持ちも大事ですが、ご家族を主体にして考えると、治療しないことを選択するのは親や伴侶である患者さんを見殺しにするようで苦しいと感じてしまったり、他の方の意見で大きく揺れてしまったりと、悩みの要素が増えてしまいます。

一番患者さんを知っているご家族の方が、「患者さん本人だったら」と考えるのが、最も後悔が少なく、わだかまりが残らない方法だと思います。その上で、身近なご家族の方と主治医と一緒にしっかり話し合い、みんなで決めていきましょう。

第42回がん対策推進協議会資料 2014.2.14
Yamaguchi T, et al. J Pain Symptom Manage 2021;61:315-322.

ACP(アドバンス・ケア・プランニング=人生会議)って何?先々の何をどう決めたらいいの?

ACPとは、いざという時、特に患者さんが自身で判断ができなくなった時に備えて、先々の医療・ケアに関する意向について本人を含めて身近な人で話し合っておくことを意味します。

2018年の厚労省のガイドライン改訂でACPについて言及されたことを受け、国内でもACPが注目され、学会などでも取り沙汰されていますが、実はACPをやったらいい人生が送れる(医学的にいうと、患者さんのQOL(Quality of life:人生の質)が上がる)という研究成果はまだ出ていません。特に、ただ単に延命治療を望むか望まないかなどを文章に記しておくだけでは、全くなんの意味ものないことがわかっていま。さらに、日本においては延命治療を希望する人ははじめからほとんどいなので、ACPをやった人とやらない人で、人生の最終段階の医療やケアに大きな差が出ないという報告もあります。また、考えていても実際にそうなったら感じ方が違うことはあるでしょうし、予想だにしないことが起きることもありますし、自分の生命が脅かされる時のことを話題に出されること自体が不快だと感じる方もいるでしょう。

それなのに、なぜACPが浸透しつつあるかと言うと、今の終末期医療の在り方に医療者自身が疑問を感じているからだと思います。医療者は、もっと患者さんに寄り添いたい、患者さんのことを知って、できるだけ望みを叶えたいからACPを推奨したいのです。言ってしまえば、医療者のエゴかもしれません。だから、必ずしもACPが必要なわけではないのですが、今後ACPのやり方や内容が研究されて深まっていけば、もっと大きな意味を持つものになる可能性はあります。

ACPの最大の目的は、何かを決めることではなく、患者さんと医療者も含めた身近な人がたくさんコミュニケーションをとって関係性を深めることにあります。ACPという形でなくても、今のこと、これまでのことも含めてたくさん話すこと自体には非常に価値があるはずです。

また、ご家族の方が唐突にかしこまって患者さんに終末期のことを確認する必要はないのではないかと私は思います。その話の前に、「お母さんって、一番好きな食べ物なに?」とか「人生で一番幸せだと感じたのはどんな時?」とか、そんなやりとりの方がずっと大切かもしれません。私自身が、母に関する100の質問をされたとしてどれくらい正しく答えられるかというと、多分10個にも満たないと思います。家族や身近な人のことをわかっているつもりで、本当は知らないことの方が多いのかもしれません。話の流れでたまたま将来のことが話題にでたら、その時に言質をとるのではなく、相手を知る一環として話し合うのでもいいのかなと思います。

人生は結果ではなく、過程です。先のことも大事ですが、それは“いま”に優先されるものではありません。

The SUPPORT principal investigations. JAMA, 1995; 274(20):1591-8
Kizawa Y, et al. J Palliative Med. 2020 Aug;23(8):1076-1083.

訪問診療に立ち会えないけど、患者さんがどんな様子だったか知りたい。

一般に訪問診療では、訪問時に不在のご家族とは連絡ノートや電話でやりとりをしているケースがほとんどですが、ノートは情報伝達にタイムラグを生じてしまいますし、電話はお互いにタイミングが合わないと難しいです。

当院では、無料で使えるコミュニケーションツールを導入しています(LINEのようなものです)。ご希望の方にはコミュニケーションツールの登録、操作方法の説明を行い、訪問診療の後で毎回状況をご報告させていただきます。
※緊急時には電話でご連絡させていただきます。

家族ケア外来(グリーフケア外来)について

グリーフとは、かけがえのない大切な存在を失ったことによる悲嘆を意味します。たとえば、気持ちが落ち込んで何事にもやる気が起きない。心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになる。今の状況を受け入れることがつらい。一人ぼっちだと感じる。感情の起伏を自分でコントロールできず、イライラしたり、涙が止まらなかったりして苦しい。など、感じ方は人それぞれです。心の状態だけでなく、不眠や頭痛などの形で体調にも影響が出ることも多々あります。これは喪失体験をした方の、ごく自然な反応です。

当院では、主に当院でお看取りをした患者さんの身近な方を対象に、グリーフケア外来を行ってます。また、予期不安に悩まされている方や、介護に関する悩みを患者さんのいないところで相談したい方のためにも、外来を開いています。

患者さんが私たちにとって大切な方であるのと同じように、患者さんのご家族もとても大切な存在です。患者さんのことを話したくなった時や、一人で自分の気持ちと向き合うのが苦しい時、溜め込んだ感情を吐き出したい時、心身の不調を相談したい時などは、ぜひ当院までご連絡ください。心のことと体のことの両面からサポートさせてただきます。

家族ケア外来(グリーフケア外来)のご相談はこちら
電話:03-5926-6886 お問い合わせフォームはこちら
※完全予約制です。必ず事前にお電話でご予約ください。
※当院外来での診察になります。
※料金:カウンセリング代として5000円/30分

在宅医療に関するセカンドオピニオン外来について

セカンドオピニオン外来とは、患者さんやご家族の方が主治医以外の医師にこれまでの病気の経過を伝え、患者さんがこれからのことを自分で決めていけるようアドバイスをもらうための外来です。主に、がんなどの命を脅かす可能性のある疾患に関してセカンドオピニオン外来行っている医療機関が多いようです。通常、保険診療ではなく自費になります。
当院が行っているのは、「在宅医療に関する」セカンドオピニオン外来です。在宅医療に関してはネット上にあまり情報がなく、クリニックの方針や患者さんの容態によっても介入方法が異なるため、「いまの在宅医療が一番合っているのだろうか?」と患者さんやご家族の方が悩まれることもあるかと思います。もちろん、まず身近な訪問看護師さんやケアマネージャーさんに相談してもらうのが良いのですが、医学的なことや治療方針に関しては、医師でないと判断しにくいこともあるかと思います。そんな時は当院にご相談ください。主治医の先生との関係がさらに良いものになるよう、サポートさせていただきます。

セカンドオピニオン外来のご相談はこちら
電話:03-5926-6886 お問い合わせフォームはこちら
※完全予約制です。必ず事前にお電話でご予約ください。
※当院外来にご家族の方に代理受診していただきます。
※料金 5000円/30分
※可能な限り、主治医の先生からの診療情報提供書、検査データをご持参ください。

そのほかにもいろいろな悩みがあるかと思います。

  • 介護疲れがつらい。家族なのだから介護するのが当たり前なのだろうか?
  • 金銭的な負担の悩み。在宅医療にはどれくらいお金がかかるのだろう?
  • これからどうなっていくのか不安。先が見えない介護への不安。
  • 介護者の孤独。ストレスの吐口がない。誰に悩みを打ち明けたらいいのだろうか?
  • 患者さんのつらそうな姿や変わっていく様子を見ているのがつらい。
  • 仕事と介護の両立をするにはどうしたら良いか?使える制度はあるのか?

これらには随時コラムで詳しくご説明させていただきます。

また、同じ悩みに見えても、ひとりひとり背景や求めているものが違うと思いますので、それぞれに合った解決法を一緒に探していきたいと思います。
お家には病院にはない自由があります。
それは、患者さんだけでなく、ご家族の方々にとっての自由でもあります。患者さんと共に過ごすかけがえのない時間が、穏やかで、楽しく、満ち足りたものでありますように。

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在宅診療とは

訪問診療とは、通院が困難な患者さんや、入院ではなくご自宅などでの療養を希望される患者さんに対して、医師が定期的に訪問して診療を行うサービスです。

在宅医療とは、医師をはじめとして、歯科医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士など)、医療相談員、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど多くの職種が関わり、チーム一丸となって患者さんの在宅での治療やケアを行うことを言います。

医療はどんどん細分化・専門化しており、ひとりひとりの医師の専門領域はより深く狭くなっていく傾向にあります。大きな病院では専門性の高い医師が求められますが、在宅療養中の患者さんに必要なのは、ジェネラルにどの症状や病気にも対応できる主治医と、しっかりと連携の取れた医療チームだと思います。

在宅医療の理想形態は「在宅の病院化」ではありません。

もちろん、苦しがっている患者さんをできるだけ早く診察することや、医療チームで情報共有を徹底し、患者さんやご家族に不安を与えないようにすること、どんな病気を抱えた患者さんにも在宅という選択肢があるように、在宅医療チームの知識と技術を向上させ、受け皿を広くすることはとてもとても大事です。

しかし、例えば、患者さんはお家にいるけれど、病院で使うようなたくさんの医療モニターつけて、隣の部屋で24時間医師と看護師が待機しているとしたら、どうでしょう。きっと気が休まらないし、お家にいる気がしないですよね。

もしそれを求めている方がいるとしたら、それを希望されるくらい不安が大きいということなので、医師としてまずやらなければいけないことは、その不安の原因を探り、対処することだと思います。その上で、それでも病院にいるような環境を希望されるのであれば、病院のどういうところに魅力を感じているのかを具体的にお聞きして、それに近いものを作る方法を一緒に考えます。

訪問診療を希望される方が、本当に求めているもの、当院はそれを追求します。

お家には病院にはない自由があります。訪問診療や在宅医療はこういうものだという固定概念など持たずに、お家でどう過ごしたいかを考えてみてください。

私たちは、病気を診るのではなく、患者さんを診て、その方に合った医療をみんなで作っていきます。

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