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2024.09.25

第1回おむすびの会開催後記

私、香西が東京都健康長寿医療センターで緩和ケアに携わるようになったのは2019年で、ちょうどコロナの流行と被り、ご家族の面会も遺族会の開催も制限されていた時でした。また、その後に勤めたクリニックには遺族会はありませんでした。ですから、実は今回の「おむすびの会」が私にとって初めての遺族会でした。

グリーフケアをきちんと学びたいと、20244月から上智大学のグリーフケア人材育成課程に入学したばかりでしたので、もう少し学んでからの開催の方がいいかと悩みました。しかしながら、むすび在宅クリニックの開業から約14ヶ月の間に当院でお看取りをした患者さんは60名を超え、ご遺族から「患者が亡くなると急に誰も家に来なくなるのでさみしい」「自分の思いを聞いてもらえる場所がないだろうか」「他のひとがどんなふうに気持ちを整理しているのか知りたい」などというお声をいただき、遺族会はクリニックの急務であるように感じました。グリーフケアに関して未熟なところも多々あると思いますが、グリーフケアは一生学び続けるものだから、完璧にしようなどと思わず、ご遺族に学ばせてもらおうという、そんな気持ちでの開催でした。

当院の遺族会では以下の3つのルールを守って、自由に語ってもらう方針にしました。

【守秘義務】
聞いた話はここに置いて行きましょう。
(安心して話せるように、ここでの話は外には持ち出さないようにしましょう。)

【パス権利】
お話ししたくないことは無理に話さなくて大丈夫です。
(今お話ししたいことを分かち合いましょう。)

【相互尊重】
一人ひとりのかなしみを大切にしましょう。
(途中で話を遮らないで、最後までお話しを聞きましょう。)

一般的な遺族会では、語り手が「ありがとうございました」と言って話を締めくくり、他の方はそれにコメントせず、次の方にバトンタッチしていく「言いっぱなし」形式にしているところが多くあると聞きます。語り手が聴き手の反応を気にせずに話すにはその方がいいのかもしれないし、上智大学では「言いっぱなし」でも聴き手の表情や頷き、雰囲気により語り手は十分聴いてもらえる経験ができると習いました。当院の遺族会でもそういうルールの方が良いのかなとも思いましたが、そこは厳密にルールを定めず、成り行きに任せることにしました。

今回は4名の方にお越しいただき、それに当院職3名(医師、看護師、相談員)を合わせた計7名で開催しました。簡単な自己紹介の後、心に残っている思い出について参加者の方々に語っていただきました。思い出から触発されて、好きだった食べ物のことや、葬儀の時のエピソードや、遺品整理の悩みや、仕事と闘病の両立についてなど、たくさんのことが話題にあがりました。

いろいろな話題が重なり合い、大きな1つの物語が紡がれるような、少し不思議で温かい経験をしました。語り手の言葉に他の方が影響され、おそらく話したいと思っていたこと以外にも、自然に言葉が引き出されていくようでした。参加者の皆さんは後悔していることも、いま悩んでいることもありましたが、それを素直に場に出してくださり、聴き手は一緒に悩んだり、かなしんだりしていて、大切なひとを亡くすという経験をした方々同士だからこそ掛け合える言葉がそこにはありました。私は、当時は知らなかった患者さんの背景や、いまご遺族がどう過ごされているかを聞けて、本当に良かったと感じました。参加した方々が同じように、「おむすびの会」を居心地の良い場と感じてくださっていたら何よりです。これからどう「おむすびの会」が転がっていくのかわかりませんが、ご遺族を広く温かく包み込めるような会でありたいと思います。

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