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体験談 2026.02.24

体験談vol.34 古賀二郎さんと久美惠さんご夫妻<後編>

体験談vol.34 古賀二郎さんと久美惠さんご夫妻<後編>

・二郎さん(84歳)の病名:脳梗塞(右片麻痺)、前立腺がん、ほか多数
・久美惠さん(81歳)の病名:高血圧症、右変形性股関節症、外反母趾、ほか多数
・訪問診療を受けている期間:3ヶ月
・家族構成:二郎さんと久美惠さんのふたり暮らし。長男さん、長女さん家族が大分在住
・インタビューに答えてくださる方:二郎さんと久美惠さん
・インタビューの時期:訪問診療開始から3ヶ月後

写真を見る高齢の夫婦

最愛の人とともに

香西:おふたりにとって人生とは何ですか?
二郎さん:楽しみだな。
久美惠さん:毎日寝る前にふたりで「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」って言うんだわ。「明日も楽しい1日にしようね」って言うと「楽しいのがいいな」とか言って。そして「おやすみなさい」って毎晩言うの。それが退職してから日課。
香西:素敵ですね。出会ってからいままでの55年間で一番楽しいのは退職してからですか?
久美惠さん:そう!仕事と子育てと介護の間は本当に忙しくて話す時がなかった。だからいまは毎日最高の幸せ。
香西:お互いのことで定年後に初めて知ったこともあるんじゃないですか?
久美惠さん:お父さんは優しいということがわかったね。それまで忙しくて優しさも出す暇がなかった。夜中に帰ってくるから、もうちょっと早く帰ってくれんかなって腹が立った時もあった。だけど、私の父や母の介護を手伝ってくれて、すごく優しく看取ってくれました。お葬式の時には「いい母やった」っていうのを皆さんの前で言ってくれて、その言葉で泣きました。「この人こんな気持ちやったんや」っていうのが分かって、惚れ直しました。忙しいと気づかんことが多かったからね。
香西:逆に、嫌いなところないんですか?
久美惠さん:お父さんは言うこと聞かんな。「こうした方がいいよ、立ち座りもこんな風にした方がいいよ」とか言うと、知らん顔しちゃう。それでも言うけど。今日も言ったけど、喧嘩にはならないな。
香西:二郎さんは久美惠さんの嫌いなところないんですか?
二郎さん:ないなぁ。
久美惠さん:いっぱいあるやろ、うるさいやろ。
二郎さん:それはそうやけど。
香西:二郎さんのためを思って言ってくれてるのがわかるんですね。じゃあ、一番好きなところはどこですか。
二郎さん:そうやなぁ、明るいとこやな。
香西:久美惠さんは本当に明るいですね。一緒にいたら笑顔になっちゃいますよね。いい人を選びましたね。
二郎さん:もし違う人が嫁に来たら、こんな人生はなかったと思う。立派な人やね。
香西:久美惠さんは二郎さんのどこが一番お好きですか?
久美惠さん:やっぱり優しいとこやな。話は右から左に抜けるけどね、怒ったりはせんわ。
香西:お互いの意見が食い違う時はどうやって解決するんですか?
二郎さん:時間。
香西:合わないなと思ったら、ちょっと時間を置いてお互いに頭が冷えるのを待つんですね。
久美惠さん:歩み寄るな。話し合わんでも、次の日になったらふたりとも「ごめん」って言うわ。まあ、だいたい私が折れる。お父さんの言うこと正しいわ。いま一緒に23区を覚えてるんやけどね、お父さんは私よりも先に全部覚えてる。頭がいいわ。そういうのを一緒にするから、すぐ仲良くなる。体が悪くなってから10年経つのにずっとお風呂も一緒に入ってます。大分の家は温泉で、広いお風呂に湯船に2人で入りよったし、この家でも浴槽の中に私が入って体洗って、お父さんがシャワーの椅子に腰掛けて洗ってます。最初は私は服を着たままお父さんを風呂に入れてたけど、びしょ濡れになるから、こんなんになるんやったら、私も脱ごうって言ってから、もう一緒に入った方が得やなってなった。
香西:もし生まれ変わるとしたら、また出会いたいですか?
久美惠さん:はい!
二郎さん:同じく。

写真

これからの人生について

香西:これからの生活で不安に感じていることとか、こうだったらいいなって思うことは何かありますか?
久美惠さん:私たちが具合が悪くなったら多分子ども達が大分から何度も来るようになるやろ。「来なくていいよ」って言うけど、多分来るやろ。やっぱ、遠いけん、旅費がかかるから申し訳ないなって思います。
香西:おふたりはずっと東京にいたいんですか?それともいずれは大分に戻ろうと思ってるんですか?
久美惠さん:ずっと。
二郎さん:ずっと。
香西:もう帰る気はないんですね。体調が悪くなっても、訪問診療や訪問看護、訪問介護を入れたらなんとかなるんじゃないかなと思います。
久美惠さん:私たちは大丈夫って思ってるんやけど、息子と娘がね、「なんか行かんと悪いやねんか」って困らせたら申し訳ないなって思う。私たち、長生きしたら困るね。
香西:150歳くらいまで生きるかもしれないですもんね。
久美惠さん:100歳まででも20年近くはあるやろ。元気で長生きがいいな。そしたら、子供たちがそんなに心配しないから。
香西:息子さんもケアマネジャーさんだから、遠方からでも「このサービス入れれば大丈夫だな」とかって考えてくれるんじゃないかなと思います。
久美惠さん:先生のおかげで家族と繋がってるからね。嬉しい。
香西:そうですね。訪問の後はグループメッセンジャーでやり取りしてるので、状況は伝えてます。
久美惠さん:すぐにみんな知ってるから、訪問リハの先生もみえたら「昨日滑り落ちたんでしょ」って言われたし、娘からも「何があったん」って電話がすぐきました。ありがとうございます。
香西:もし二郎さんが脳梗塞を再発してしまったり、おふたりが新しい病気を発症してしまったりした時は、家で治療できるものは家で治療していきたいですか?
久美惠さん:はい。こうしてふたり揃っておればね。
香西:ふたりで一緒にいることが一番大事なんですね。
久美惠さん:お世話ができるからね。だから、できるだけもっと長くもっと長く、一緒におりたい。だってまだまだ行けてないところがたくさんあるもん。
香西:おふたりのように病気を抱えていても、生きるモチベーションを失わずに、元気に笑って生きていく秘訣って何ですか?なかなかそういうふうにできないと思うんですよ。病気になったから無理しないようにしようと引きこもってしまう方の方が多いと思うんですけど、そうじゃなくいられる秘訣が知りたいです。
久美惠さん:仲良くすることやな。仲良しやったら、どこまででも行けるし、「次何しよう」っていう話を毎朝できるし。新聞もお父さんが見てたら、私は反対側から逆さのまま読める。毎日の散歩もいつも一緒です。そうやって、一緒に過ごすことが元気の秘訣。
香西:お互いがお互いの元気の素なんですね。
二郎さん:そうや。
久美惠さん:そやな。うふふ、おかしいやろ。
香西:羨ましいです。そういう人に出会いたいなと思いました。

対談風景

古賀夫妻と訪問診療

高齢男性と笑顔の高齢女性
香西:訪問診療はおふたりのお役に立っていますか?
久美惠さん:はい。もう先生の見える日を、指折り数えて待ってます。
香西:ありがとうございます。普通、医者って嫌われ役なので「会いたくないな」とか言われるんですけどね。
久美惠さん:お父さんは一目見た時から香西先生が大好きで、お父さんが好きな人は私も好き。
香西:ありがとうございます。なんでそんなに好いてくださったんですか?
二郎さん:顔。
香西:顔っ!顔にいろいろ出るって言いますからね、人相というか。
久美惠さん:何でも言いやすいね。
香西:ありがとうございます。隠さずに何でも言ってくださいね。
久美惠さん:なんか孫かな娘かな、先生の年齢はわからんけど、もうほんと家族のような感じやね。初対面の時からお父さんは「よかったな、よかったな」って言うんよ。
香西:嬉しいです。私もお父さんお母さんだと思って頑張りますね。
久美惠さん:よろしくお願いします。
香西:他に何かこれを伝えておきたいっていうことはありますか?
二郎さん:ないです。
久美惠さん:いままでの人生全部楽しかった。ボランティアとか役に立つこともしてきたから、あの時代も良かったなぁって思って。話してたらいろいろ思い出して、楽しい気分が蘇ってきた。お世話になったみんなのおかげです。息子や娘にも感謝しています。これからもどうぞよろしくお願いします!
香西:これまでの人生も楽しかったし、これからも楽しいっていうことですね。こちらこそよろしくお願いします!ありがとうございました。

寄り添う高齢の夫婦

編集:児玉紘一
執筆・文責:むすび在宅クリニック院長 香西友佳
対談日:2026年某月

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